箱根駅伝2区を3回走るも「自信になったかというとイマイチ」 東京マラソンで日本人トップの山下一貴は「もっと欲を持て」と言われ続けてきた (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

【日本人トップになれた理由】

 そして今回、大迫という結果を出している選手がいても強気で行けた理由をこう話す。

「自分が『引っ張って欲しい』という感覚になり、うしろにつこうと強く考えてしまったのが、前回の2位になった大阪でした。だから、今日はうしろにつかせてもらおうという感覚はなくて、一緒に走るなり、ちょっとリズムをもらうなりという考えでした。去年はつかせてもらおうと強く思ったから、そこで1回腰が引けて自分のリズムを失ってしまい、抜け出していく星岳くん(コニカミノルタ)に対応できませんでした」

 そんな反省を生かしての日本人トップだった。

「大八木監督からも黒木監督からも、『お前、もっと欲を持て』というのはけっこう言われています」と苦笑する。

 黒木監督も「井上は『ガツン』とできるタイプだけど、山下はジワジワ行くタイプだから、MGCを考えれば上りで仕掛けていくくらいじゃないと、うしろを切り離せないですね。だからこれから、日本代表になっても今回と同じような走りができるかどうかです。今回、日本人トップになって、性格がどう変わるかというのもありますが、今日も新しいシューズがもらえるのに『これがあったので、履きます』と言って去年の型を履いたくらい、こだわりがないので。あまり欲張らずに淡々とやって欲しいですね」と見守る。

 そんな山下だが、今回は最後で少し悔しさも感じた。37km過ぎから外国勢に突き放されたが、1位とは29秒差で6位とは13秒差という結果だったからだ。「あそこでもう少しついていれば、もしかして戦えたかもしれないな」という気持ちで最後は走っていたと言う。

「ずっとパリ五輪を目標にしてやってきていますが、大会ごとに目標は違います。今回は初めて1km3分切りにチャレンジしたいというモチベーションでした」

 今回の記録で日本陸連が設定する世界選手権派遣記録突破をし、出場するか否かを1番手で選択できる権利を得た。もし世界選手権に出場するなら、その7週間後にはMGCも走らなくてはならない。それをどうするかは未定だが、「黒木監督が前に『世界選手権に出てMGCも走るくらいタフな選手じゃないと』みたいなことも言っていたので、両方出てみたいという気持ちもあります」と笑顔を見せた。

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