箱根駅伝出場に大きく貢献。予選会で好走した、4人の注目ルーキー (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

 日体大は予選会5位に入り、75年連続75回目の箱根駅伝出場を決めた。エースの藤本珠輝(4年)が故障でエントリ―から外れ、4年生の盛本聖也と廣澤優斗がチームを牽引したが、チーム3番目のタイムを出したのが山崎丞(1年)だ。64分05秒で個人60位となり、タイムを稼いだ。バネを活かした走りが特徴で、新潟県の5000mの高校記録を持つ。練習のプログラムが高校時と似ていることから日体大を選び、箱根では1区か2区が希望だ。箱根までまだまだ伸びしろがあり、往路を走るチャンスは十分にあるだろう。

 予選会9位と苦戦した東海大。石原翔太郎(3年)や吉田響(2年)の活躍もあり、なんとか箱根本戦への出場を決めた。チーム4番目の結果を出したのは、鈴木天智(1年)だ。

 レース中は、沿道からの声に焦りを覚えたという。

「自分たちは集団を作って走っていく感じだったんですけど、途中で東海11位って沿道の人が教えてくれたんです。これはヤバいと思って、スピードを上げたんですけど、公園に入ってからが本当にきつくて、脱水症状にもなって粘りきれなかったです。夏合宿は相当頑張って走ってきたので、63分台はイケるかなって思ったんですが、ハーフは甘くなかったですね」

 鈴木のタイムは、64分05秒(個人58位)。それでも予選会当日の湿度の高いなかでのレースであれば、十分及第点はつけられるだろう。両角速監督も「鈴木はいい走りをしてくれました。夏もケガなく、順調にやれたので、このまま継続して成長していってほしいなと思います」と語る。

 鈴木の持ち味は、「粘り」だ。

「長所はタレても(失速のこと)粘りきれるところです。高校の時は、タレたらやめてしまうみたいな感覚だったんですけど、今は絶対にやめないと決めています。そのせいか、気持ちがだんだん強くなってきましたし、人間的にも少しは成長できているのかなと思っています」

 東海大は、毎年全国からトップクラスの選手が入部してくる。チーム内の競争はもちろん、各学年の競争も非常に厳しい。鈴木は、今、一番意識しているのが花岡寿哉(1年)だ。

「花岡は、今回は出場していないですけど、本当に強い。花岡には簡単に勝てないので、まずは練習から勝つことを目標にしたいです。他の大学では、早稲田の山口(智規)君。今日のレースでは絶対に勝ちたいと思っていました(山口は体調不良により個人289位に終わった)。そして僕は東北出身なので、同じ東北出身の吉居駿恭(中央大1年)君に勝ちたい気持ちもすごく高いです」

 これから全日本大学駅伝(11月6日)、そして箱根駅伝(来年1月2、3日)と駅伝レースが続く。昨年は、箱根駅伝本戦でまさかの11位となり、シード権を失った。今回は予選会9位ということで、両角監督は「全体の19位というチーム。ここからシード権を獲るのは簡単じゃない」と言うが、それを獲るためには鈴木の力も必要になる。その本戦、鈴木はどの区間を走りたいと考えているのだろうか。

「箱根は、あくまでも個人の考えですが、1区を走れたらいいかなと思っています。ラストはスパートの打ち合いになると思いますが、挑戦したいですね」

 予選会という負けられないレースに出てくる1年生は、基本的に力がある。彼ら以外にも故障などでレースに出走できなかった選手も多いだろう。これから全日本大学駅伝やハーフマラソンなどのレースを挟み、箱根駅伝と向かうなかでも、國安や斎藤、山崎、鈴木らに続く面白いルーキーが出てきそうだ。

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