世界陸上の男子競歩で日本人がワンツーフィニッシュ。山西利和は意表を突くスタートに「スローペースは嫌だった」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 新華社/アフロ●写真

 そんな山西を池田はしっかり追いかけ続ける。加えて、今回は初出場の住所大翔(ひろと/順天堂大)が8位入賞を果たしたことで、日本チームに新たな流れも見えた。

 今年2月の日本選手権で1時間20分14秒の自己新を出して2位に入ったものの、住所は当初、今回の代表に入れない立場だった。というのも、日本選手権優勝の高橋英輝(富士通)と3月の全日本能美大会優勝の松永大介(富士通)が代表内定を決め、4月の輪島の選考レースでは、池田が派遣標準記録を突破して内定を決めて出場枠は埋まってしまったのだ。

 だがその後、35kmでも内定条件を突破した松永が20km代表を辞退したため、住所の出場が決まった。そのチャンスを「今回はプレッシャーを感じることなく、先頭集団にできるだけついていくことを考えていた」という積極的なレースをし、自己記録に25秒差という合格点のレースをした。

 今村シニアディレクターも「チームとしても今回、住所選手が8位になった意味は大きい」と話すが、山西も「ここ数年は池田選手から下の世代がなかなか伸びてきていなかったのですが、その世代でも『このくらいで歩ければ、世界で結果を出せる』ということがわかり、新たな指標になったと思う」と、高く評価する。

 山西や池田が目指すのはパリ五輪での連続メダル獲得だが、ふたりはこの世界選手権を、その第一歩として、確かなものにした。さらに住所の健闘は、開催が決定した25年世界陸上東京大会開催も見据える、チームの課題でもあった"パリ五輪以降"へ光が見えてくる結果にもなった。まだ男女の35kmが残っているが、女子20kmの藤井奈々子(エディオン・23歳)の6位とともに、確実な収穫を得た。

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