実業団駅伝の監督が語る仕事と競技の両立。ユーチューバーになったわけ (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 昨年のMGCは陸上界を大いに盛り上げた。会沢監督は単純に、こういう大会がもっと増えればいいのにと思ったという。

「注目される場所があるというのは選手が活躍できる場が増えることでもあるし、企業もアピールできる場が増えるのでいいですよね。ニューイヤーみたいな大会も年1回じゃなくて形を変えて2、3回やればいい。でも、その前に陸上、中長距離をもう少しポピュラーにしていく必要があると思います」

 陸上競技を人気スポーツに、という話はずいぶん前から聞こえている。だが、現状は短距離の100mとマラソン、そして箱根駅伝は人気があるが、陸上全体を見るとマイナーの域を出ない。陸上の中長距離をこれからよりポピュラーにしていくために、どうすべきと考えているのだろうか。

「僕は、サッカーみたいなシステムがいいなと思っています。地域密着でやっているし、その地元を生かしてジュニアユースから選手を育成している。地元の選手がプロになると、みんな喜んで応援してくれる。うちも地域密着のスーパーなので本当はジュニアユースを組み立てたい。今は実現が難しいですが、そうして若年層をサポートするなどして裾野が広がれば、トップの力も人気も上がると思います」

 サッカーはJ3のチームに至るまでユースやジュニアユースのチームを保持し、育成強化に努めている。その結果、世界で戦える選手が出てきている。陸上は主に部活動が中心で、クラブチームもあるが、まだ少数派だ。運営予算、指導者の質、勝利至上主義、親のかかわり方、練習環境等、課題は多い。

「でも、世界で戦える選手が出れば、地域も選手も監督もみんなが喜べるじゃないですか。アスリートだけじゃなく、みんなが喜べる環境を作ることが大事ですね」

 会沢監督は表情を崩してそう言った。ただ、実業団の世界に目をやると、その未来がなかなか見えにくい。

「今年から公認コーチがいないと駅伝に出場できないので、その資格(公認陸上競技コーチ3)を取るように言われました。研修には1日7、8時間、計8日間ぐらいかかるんです。陸上を仕事にしているチームはいいですが、都庁とか消防庁とか、なかなか時間を取るのが大変なところもある。資格云々を強くいうと駅伝を狙うチームが少なくなる可能性が出てくる。門戸を広げたいのか、狭めたいのか......どっちなのかなと。僕は狭めたからといってレベルが上がるわけじゃないと思っています。門戸を広げて実業団で走る選手がたくさんいるから強い選手が出てくるんですよ」

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る