箱根駅伝で「秘密兵器」となるか。優勝候補の東海大に1年の新星現る (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 怖いのは故障だけだ。松崎は疲労と痛みに鈍感で、疲労骨折をしても痛み止めを飲めばレースで走れるという強さがある。合宿では練習がハードになるが、「今後は自分の体により繊細になりたい」と語るように、体の異変に気づくことも重要になる。そうして故障せず、これから1カ月半練習を積めば、箱根も射程圏内に入ってくる。

 今年は、各大学の1年生がエース級の走りを見せている。駒澤大の田澤廉はすでに出雲駅伝、全日本駅伝を走り、チームを上位に押し上げるなど貫録の走りを披露しているし、青学大の岸本大紀も同様の活躍を見せている。

 部内トップの結果を出したにもかかわらず「先輩から(取材を)どうぞ」と気を遣う松崎を、市村朋樹(2年)は頼もしいといった表情で見ていた。

「咲人は前半から勢いを持って走るという、自分にはできないことをやってのけた。自分もあんな走りができたらいいなって思います」

 学年や年齢に関係なく、「いいものはいい」と素直に認める市村の選手としての懐の深さが伝わってくる。ただ、市村も62分53秒で8位と堂々の走りを見せた。

「個人的には63分台を狙っていて、中島(怜利)さんに最初の1万mは突っ込んでいったほうがいいと言われて。そのとおり突っ込んでいったんですけど、ちょっと勢いが足りなくて......」

 5キロ地点は14分47秒で、先頭の赤崎暁(拓殖大)に次いで2位で走っていた。中島のアドバイスどおり、積極的なレースを展開していた。

「でも、赤崎さんが思っていた以上に速いペースで引っ張っていて、このまま自分がついていったらもたないと思ったんです。そこからは人についていったり、ペースを少し上げたり、自分が動けるギリギリの状態で走っていました。内容的にはあまり評価できないですけど、今回ハーフを初めて全力で走って、62分台というのはよかったと思います」

 そう言って、市村は笑顔を見せた。

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