箱根駅伝で「秘密兵器」となるか。優勝候補の東海大に1年の新星現る (5ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

「ハーフで記録を出したからといって、箱根のメンバーに入れるとは思っていないので、ここからは合宿や練習で自分の調子のよさをアピールしていかないといけない。そうしないと箱根を走れないと思います。ただ、部内で激しく争って疲弊するのは嫌なので、そこは気をつけてやっていきたいです。希望区間は、前を追いかけるのが好きなので、そういう展開に持ち込みやすい復路の7区、8区で走れたらいいかなと思います」

 2つの駅伝で結果を残し、今回もしっかりタイムを刻んだ。調子も維持しており、両角監督、西出コーチからの信頼も厚い。現時点で、市村が箱根を走るための条件はすべてクリアしていると言える。

 上尾ハーフは松崎が4位、市村が8位に入って、それぞれ箱根駅伝への挑戦権は手中におさめた。まだ、確約できないのは、調子のいい選手、調子を上げている選手が多く、メンバー争いが非常に激しいからだ。

 上尾ハーフの前日に行なわれた日体大記録会の1万mでは、塩澤稀夕(3年)の28分16秒17を筆頭に、西川、松尾も28分台の自己ベストを出し、郡司も29分01秒67で自己ベストを更新した。

 西出コーチは「チーム内で選手同士が刺激し合って、いい結果が出ている。昨年よりもチームはいい状態になっている」と手応えを感じている。チームに漂う雰囲気も、結果が出てもなおピリッとした緊張感がある。選手たちは口々に「最終的に誰が選ばれるかわからない」と語る。

 そうなると、合宿で激しい削り合いが起こるが、2年前にそれを経験している黄金世代の選手たちは自重するだろうし、両角監督と西出コーチも出力をセーブさせていくだろう。

 黄金世代の主力の調子がまだ万全ではないなか、ほかの4年生が調子を上げ、3年の塩澤、西田壮志、名取燎太の"黄金トリオ"も健在だ。そして今回、上尾ハーフで結果を出した松崎と市村の下級生コンビが上の世代を突き上げ、東海大は箱根駅伝2連覇を狙えるだけの分厚い選手を持つ、芯の太いチームになりつつある。

  『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』

【発売日】2019年10月4日

【発行】集英社

【定価】1,300円(本体)+税

【内容】2019年1月3日──。 往路2位から復路8区の大逆転劇で みごと箱根駅伝初優勝を飾った東海大学。 その“栄光”にいたる道程にあった苦難や葛藤、 当日のレース模様などを 監督、コーチ、選手たちの証言を交えて 鮮やかに描き出す。

そして、「黄金世代」と呼ばれて輝きを放ってきた 現4年生たちが迎える学生最後のシーズン。彼らはどのような決意で箱根連覇に挑むのか。 出雲・全日本も含む3冠獲得を目指し、東海大学の「黄金世代」が駅伝シーズンに向け、再び走り出す 。

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