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【月報・青学陸上部】大苦戦の
全日本大学駅伝。裏で何があったのか (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo news


 その田村が3.9km付近で一気に14秒縮め、3位に上がった。絶好調の走りを見せていたが、後半に向けてひとつだけ不安があった。暑さである。暑さに弱い田村和は、例年、夏季合宿を満足に過ごせず、今年の1次夏季合宿でも倒れた。この日は快晴で、すでに17度を超えていたのだ。

 5km地点でバスが止まった。原監督の表情にも少し余裕が見える。このまま田村和が快走すれば2区で取り戻し、3区で維持し、4区の安藤で突き放せる。原監督の描くプラン通りに流れていきそうな気配だ。

 田村和がやってきた。

「自信持っていけー。給水しっかり取っていけ」

 原監督の強い声が飛んだ。2区の中間地点、ついに田村和がトップを行く早稲田大の平和馬をとらえた。

「10kmぐらいでバテてキツかったけど、ここで負けるわけにはいかない。出雲と同じく絶対にトップに立ってチームに勢いをつけ、同じ3年の吉永に襷(たすき)を渡すんだという気持ちで走っていました」 

 ラスト200m、田村和は襷を握り締め、歯を食いしばり最後の力を振り絞って走った。平との競り合いに負けるわけにはいかない。昨年は最後の競り合いに負けた数秒差が、最後に響いて敗れてしまった。

 田村はさらに加速する。夏季合宿で厳しい練習をやり遂げてきた成果がラストスパートに出た。2区38分7秒、区間賞の走りでトップに立った。

 だが、2位の早稲田大との差はわずか1秒だった。

 3区(9.5km)、吉永竜聖(3年)は早稲田大の鈴木洋平と並走していた。吉永は今回が駅伝デビュー戦になる。原監督が夏季の御嶽2次選抜合宿に抜擢し、下田、田村和、中村祐紀と並ぶ3年生の主力のひとりとして期待していた。出雲駅伝は出番がなかったが、その後の日体大記録会では13分49秒の自己ベストを叩き出した。「吉永すげぇー」と部員から感嘆の声が上がり、原監督もここで全日本駅伝での起用をほぼ決めたという。

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