世界一のチームを支える車いすラグビー日本代表メカニックは、ミスから技術を磨いた「もう絶対に選手を裏切ることはしない」 (3ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

忘れられないミス

 川﨑さんの師匠は、長年にわたり日本代表のメカニックを務める三山彗さん。三山さんが仕事で福岡に来るたびに、ラグ車の調整方法や問題解決のヒントを教えてもらった。その三山さんから「ジャパンチームを手伝う気持ちはありますか?」と声がかかったのが、2016年のリオパラリンピック後のことだ。「あります」と即答した川﨑さんは、翌17年の1月に初めて代表合宿に自費で参加し、3月には海外遠征に帯同。そして4月に正式にJAPANのユニフォームを手にしたのだった。

 とはいえ当初は、川﨑さんは日本代表のスタッフとしては新人。技術も、選手の信頼度も、「三山さんとは雲泥の差」だった。ラグ車のミリ単位の調整を行なうには、メカニックと選手の間に信頼関係の構築が必須だ。川﨑さんはとにかく選手の要求に耳を傾け、そのとおりに仕上げることに集中。海外での大会では選手と同じ部屋に寝泊まりし、同じ釜の飯を食い、少しずつ距離を縮めていった。

 川﨑さんには、忘れられない出来事があるという。代表に関わってすぐの5月、アメリカで開催された大会にメカニックとしてひとりで帯同したときに、あるハプニングが起こった。「得点の要となる池(透暢)選手のラグ車が3回立て続けにパンクしたんです。3本目がパンクした時、1本目のタイヤをまだ修理できていませんでした。それによって、池選手が30秒から1分くらい試合に出られない時間帯ができてしまった。僕のミスです。これはもう、一生僕のなかで引っかかって取れない責任だと思っています」

 それからというもの、自分を戒め、ひたすら技術と正確性、スピードを磨いた川﨑さん。「もう絶対に、選手を裏切ることはしない。それだけは自信があります」と言いきり、前を向く。

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