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世界一のチームを支える車いすラグビー日本代表メカニックは、ミスから技術を磨いた「もう絶対に選手を裏切ることはしない」

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 車いす同士のタックルが認められている車いすラグビー。その衝撃と、ハードなチェアワークの積み重ねによって競技用車いす=通称「ラグ車」には大きな負担がかかる。練習中でも、試合中でも、タイヤのパンクはしょっちゅう起こる。そんな時にベンチから颯爽と駆けつけ、素早くタイヤを交換するのがメカニックスタッフだ。現在、デンマーク・ヴァイレで開かれている「車いすラグビー世界選手権」に出場している日本代表には、川﨑芳英さんが帯同。試合の状況に目を光らせ、スピーディーかつ細やかな対応でチームを支えている。

試合が進む横でパンクの修理を行ない、次に備える川﨑さん試合が進む横でパンクの修理を行ない、次に備える川﨑さん パンクしたタイヤの交換など、コートの上で行なうメンテナンスの時間は1分以内とルールで決められている。その場でパンク修理をする時間はないため、メカニックは新しいタイヤに交換すると、パンクしたほうをベンチに持ち帰って点検し、修理する。激しいタックルでタイヤを守るホイールはボコボコだが、実は試合中のラグ車のハプニングは、タイヤのパンク以外はほとんどない。それは、メカニックがふだんから入念なメンテナンスを行なっているからだ。

「選手がラグ車になんとなく乗れていないときがありますが、それには何か原因があるはずなんです。なので、走行中の音を聞くとか、ちょっとしたガタツキを見逃さないように注視しています。コートが変われば、漕ぎ方や漕ぎ味が変わります。その感覚の違いを形にするために、選手と打ち合わせてミリ単位の調整をしていきます」と川﨑さん。

 大前提として、ラグ車の調子が悪くてパフォーマンスを発揮できない、ということがもっともあってはならないこと。川﨑さんによれば、そういった不安材料は準備段階で完全に消しておくために、海外の試合では誰よりも早く会場に入って、コート状況と、ラグ車を置いている倉庫から会場までの動線など、すべてを確認するそうだ。「100%の準備をして送り出すのが、メカニックの仕事だと思います」と、川﨑さんは言いきる。

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