車いすラグビー日本代表が世界選手権で3位。次世代エース・橋本勝也が経験した葛藤と覚悟

  • 荒木美晴●取材・文・写真 text&photo by Araki Miharu

 4年に一度開かれる車いすラグビーの世界選手権が、10月10日から16日までデンマーク・ヴァイレで行なわれた。パラリンピックの8カ国よりも多い、12カ国が参加。2連覇を狙う日本代表は、予選リーグを5戦全勝で首位通過し、準々決勝ではニュージーランドを撃破した。しかし、準決勝で強豪アメリカに敗戦。3位決定戦でデンマークを61-57で破り、銅メダルを獲得した。

今年4月から練習環境を変え、着実に成長をしている橋本勝也今年4月から練習環境を変え、着実に成長をしている橋本勝也「プレッシャー! プレッシャー!」

 最終日のブロンズメダルマッチ。チーム最年少・20歳の橋本勝也は、地元デンマークの大応援団の声援に負けないくらい、ベンチから大きな声を出し続けた。日本は序盤から連携のとれた攻撃を展開してトライを重ね、銅メダルを獲得。しかし、橋本自身の出場機会はなく、彼の2度目の世界選手権は静かに幕を閉じた。

 車いすラグビーは、障害の程度によって各選手に持ち点が設定され、コート上の4人の合計点を8点以内で編成しなければならない。橋本はもっとも障害が軽い「3.5」で、ハイポインターと呼ばれる。日本にはほかに、池透暢(3.0)、池崎大輔(3.0)、島川慎一(3.0)という世界に誇るハイポインターがいる。今大会の橋本の役割のひとつは、自身のプレータイムを伸ばして、彼ら3人のうちの2人を休ませることだった。トーナメントの上位になるほど、身体的にも精神的にもタフなラグビーが展開されるため、体力温存がカギとなってくるのだ。

 4年前は出場機会がほとんどないまま終わってしまったが、今回はチームの一員として果たすべき明確な使命があった。「カツヤはもうハイポインターの交代要員ではない。核としてローテーションに入ってきている」とは、ケビン・オアー日本代表ヘッドコーチ。実際に、今大会の序盤は競った場面で起用され、日本の得点源の一端を担った。

 ところが、大会中盤以降は調子が上がりきらなかった。その結果、予選リーグのライバル・オーストラリア戦で、出場したのは第2ピリオドのわずかな時間に留まり、同じ3.5点の世界的プレーヤーであるライリー・バットのスピード、テクニック、視野の広さ、崩れないメンタルに気圧された。

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