パラ陸上の鉄人から後輩にエール「向かい風はそのうち追い風になる」 (4ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text Araki Miharu
  • photo by AFLO SPORT

 また、永尾さんの実直な性格は周囲の信頼を集め、夫婦を慕う若者も多かった。ふたりでボランティアの合同練習会などを開いて、後輩たちとともに汗を流したことは、いい思い出だ。

 現在、由美さんは、7月の世界選手権日本代表に選出されている西勇輝選手のコーチを務め、永尾さんはジュニアや次世代アスリートの育成に尽力する。今年の日本選手権でも活躍した彼らに、永尾さんは厳しくも優しい目を向ける。

「世界の勢力図を見れば、アジアでも中国やタイは当分強いでしょう。とくに中国は次から次へと新しい選手が出てくる。そこに勇輝や生馬(知季)がどれだけ食い込んでいけるか。それに、技術力が向上して(障がいクラスがひとつ重い)T53とのタイム差はほぼなくなってきた。つまり、T54の選手はもっとできてよいということです」と永尾さん。

 そして、これからの車いす陸上界を引っ張っていく後輩への思いを口にする。

「"練習は嘘をつかない"って言うけれど......、そんなことはない(笑)。僕は嘘をつかれる確率を下げるために練習をやっている感じでした。結果が出なくて"なんで?"と後ろを振り返るくらいなら、いろいろ試してやってみたらいい。向かい風は、そのうち追い風になる。調子が悪くても、何かに逃げずにできることをコツコツやれば、1年後にかなり変化している自分に気づけるはず。彼らには、真正面から競技に取り組み、努力している自分を肯定してあげられる選手になってほしいと思っています」

 レジェンドからの金言は、未来を見据え、たくましく育つ後輩たちに、きっと届くはずだ。

■パラスポーツ 記事一覧>>

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る