スキージャンプ界のレジェンド、50歳の葛西紀明が明かす「モチベーション維持」と「もうひとつの夢」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by MATSUO.K/AFLO SPORT

【スリップ現象に悩まされても前向きに】

 2018年平昌五輪後、葛西が口にしていた調子が落ちた原因は、踏み切りで立ち上がる時にスキーが、その瞬間にうしろに滑って、ジャンプ台に伝わる力が減ってしまう、"スリップ"という現象だ。

「18年の平昌五輪シーズンからスリップしてきたなと感じていて、『これになると、しばらく時間がかかるんだよな』と思いながら......。わかっていても、なってしまいました」

 一方で、「何年かかけて抜け出せばいい」という気持ちで取り組めているので焦りはなかったと言う。

「20代でやっていたようなトレーニングを今はできないと思うけど、あの頃、死に物狂いでやったトレーニングのお陰で今も体力を保持できているので、今はやっていてよかったなと思っています。

 若い頃は体力や筋力、瞬発力は他の選手とは段違いにあったので、それが今は落ちてきて普通の人のレベルにいるのかと思います。だから、体自体は衰えてはいないけど、何年か前からは『筋力の問題じゃない』と気がついて。例えば(高梨)沙羅選手を見れば、明らかに男子より筋力はないのに、調子がよかったら僕らと同じくらい飛ぶじゃないですか。筋力もある程度は必要だけど、スリップしないでジャンプ台に垂直に力を伝える踏み切りができれば飛距離を伸ばせるということなんです。

 だから何年かかけてスリップから抜け出して調子が上がれば、まだいけるという気持ちでずっといます。(小林)陵侑(土屋ホーム)のレベルまではいけないとしても、他のW杯メンバーのレベルには調子さえ上がってくればいけるという自信はあります」

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