その名は「めろでぃ」と「そらと」パリ五輪が楽しみな日本クライミング界期待のティーンエイジャーたち (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 荒木優一郎●撮影 photo by Araki Yuichiro

【語彙力も豊富な16歳】

 オリアンとの出来事が「BJCに向けて1年間ずっとトレーニングしてきた」という関川のモチベーションを刺激した。ともすると目標を見失いがちになる日々の練習に真剣に向き合えたことで、さらなる成長につながったのだろう。

 ただ、現状で関川がパリ五輪メダル候補と打ち上げるのは大仰だろう。ボルダリングに関しては世界の一線級と渡り合えるポテンシャルを秘めているものの、パリ五輪で実施されるスポーツクライミングの種目は<ボルダリング+リード>と<スピード>の2本立てだ。

 関川がパリ五輪を本気で狙うには、リードの実力を二、三段上げる必要がある。それでもこの1、2年の関川の成長曲線を踏まえれば、国内ユース大会で小学生だった頃から関川を見てきた者としては可能性を感じずにはいられない。

予選を1位で突破した16歳の安楽宙斗予選を1位で突破した16歳の安楽宙斗この記事に関連する写真を見る 一方、安楽宙斗は予選を1位通過し、臨んだ準決勝ではライン下に沈んだものの、その実力はすでに"パリ五輪の日本代表最右翼"と言っても過言ではない。

 高校1年生の安楽は、昨年からシニア大会に出場しているが、昨年2月のBJCは33位、リードジャパンカップは9位。シニア大会ならではの距離感や強負荷の課題に苦戦した印象だった。

 だが、昨年11月に行なわれたボルダリングとリードの複合成績で争う「コンバインドジャパンカップ」に優勝。そして今大会も、予選では唯一4完登と成長の証を見せた。

 安楽のことも関川同様に小学生の頃から国内ユース大会で見てきたが、会うたびに体が大きくなる印象を受けた。そのたびに「身長が伸びた?」と訊くと「いや変わってないです」と笑顔で応じてくれたものだが、今大会も体つきがさらにしっかりした印象を受けて訊ねると......。

「今、身長は167cmくらいなので、2cmくらい伸びたのかな? もう背はあまり伸びてないですけど、フィジカルトレーニングをしっかりやるようになりました。専門的なものではなく、基本的なことをやっているんですけど、それを欠かさずやるようになったから、体つきが大きく見えるのかもしれませんね」

 安楽は小学生の頃から受け答えのしっかりした......というか、よくしゃべる子ではあったが、高校1年生ともなると質問者の意図を汲み取って返してくれる。客観的に状況を振り返る力を持ち、それを伝える語彙力も豊富なので、取材者にとってはこれほど楽な16歳はいない。

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