その名は「めろでぃ」と「そらと」パリ五輪が楽しみな日本クライミング界期待のティーンエイジャーたち (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 荒木優一郎●撮影 photo by Araki Yuichiro

【15歳の泣き虫めろでぃ】

 女子3位の関川愛音(せきかわ・めろでぃ/15歳)と、男子7位の安楽宙斗(あんらく・そらと/16歳)。この名が今シーズンから2024年にかけて日本中に知られる可能性は小さくないだろう。

 中学3年生の関川は、年齢制限に達して今大会が初出場。予選は5課題を全完登して6位。2日目の準決勝も6位通過したが、その準決勝の競技後にも"泣き虫めろでぃ"らしさが見られた。

 自らの競技を終えたあとは、後続選手たちの動向を順位ボードを気にしながら見守る関川。最終競技者の結果次第では準決勝敗退の展開だったが、首の皮一枚つながって決勝進出が決まるや、涙が一気に溢れ出して顔をうずめた。

「決勝戦に出られることがうれしかったのもあるんですけど、準決勝で落ちるにしてもライン下だけは嫌だなと思っていて。ホッとした気持ちでした」

「ライン」とは次のラウンドに進めるかの境界線のこと。負けるにしてもライン下だと「あと少しだったのに」の思いが強くなるため、多くの選手たちが嫌がる。

 それをギリギリで回避して進んだ決勝戦で、関川は緊張感に押し潰されることなく持ち味を存分に発揮した。決勝をともに戦う顔ぶれに、憧れの存在の伊藤や、仲のいい青柳未愛(あおやぎ・みあ/19歳)がいたことがプラスに働いたのか、決勝の課題を楽しもうとする姿とダイナミックな動きで観客を虜にした。

「今回は本当にたまたまだったと思うので、もっとたくさんトレーニングして強くなりたいです」

 試合後に目もとを少し赤くしながらそう語った関川には、今シーズンの大きな目標がある。それは、フランス代表のオリアン・ベルトーネと同じ舞台で勝負することだ。

 関川より2歳上のオリアンは、2021年に年齢制限に達して国際大会にデビューすると、ボルダリングW杯の表彰台の一角を定位置にしたパリ五輪のメダル有力候補だ。

 そのオリアンとは、昨年10月にうれしいサプライズがあった。

 岩手県盛岡市でのW杯コンバインドを観戦に訪れた関川は、試合後に入った飲食店でオリアンを含むフランス代表チームに遭遇。オリアンに用意していたプレゼントを渡し、記念撮影をすると、フランス代表チームのメンバーからフランス代表ジャージーが関川に贈られた。

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