その名は「めろでぃ」と「そらと」パリ五輪が楽しみな日本クライミング界期待のティーンエイジャーたち (4ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 荒木優一郎●撮影 photo by Araki Yuichiro

【加熱する日本代表争い】

 最終競技者として臨んだ準決勝では、1課題目、2課題目はゾーンも逃し、3課題目は8度目のアテンプトで完登。完登者ゼロに終わった第4課題はゾーンを獲得して1完登2ゾーン。これは優勝した楢﨑明智と同じ成績だが、アテンプト数差で初の決勝進出は逃した。

 悔しかったはずだ。しかし、それに終始しないのが安楽らしさでもある。同学年で子どもの頃から切磋琢磨する仲間で決勝進出を果たした通谷律(かよたに・りつ/16歳/決勝4位)へのエールを送っている。

「(通谷)律にはボクの分まで頑張ってもらいたいです。律は僕より背は低いし、ウイングスパンだってボクは180cmを超えるけれど、律は170cmを超えるくらい。それでも決勝に進んだ。一緒に決勝を戦いたかったけど、律が決勝戦を戦うのはすごい刺激になるので、しっかり見届けたいと思います」

 安楽は予選や準決勝終了後に自身のクライミングについても的確に振り返ったが、その自己分析力の高さも安楽の飛躍を支えているものだろう。

 状況を把握し、登るためには何をどう変えるべきかを、限られた競技時間のなかで整理して課題に対峙していく。そして、それを次大会へとつなげられる。だからこそ、昨年1年間で大きな飛躍を遂げたのだ。BJCで手にした収穫と課題によって、安楽が今後さらに成長をどう遂げるかは楽しみである。

 スポーツクライミング日本代表選考会の第二弾は、2月25日〜26日に千葉県印西市で行なわれる「リードジャパンカップ」になる。女子の大本命は森秋彩(BJC4位)、男子は安楽を中心に楢﨑兄弟やW杯リードの優勝経験のある樋口純裕(BJC15位)や本間大晴(BJC21位)が絡む展開が予想される。

 パリ五輪前年で重要な今シーズン、さらに加熱する日本代表争いに注目したい。

著者プロフィール

  • 津金壱郎

    津金壱郎 (つがね・いちろう)

    フリーランスライター・エディター。大阪万博年生まれ。東京都出身。出版社での雑誌やMOOKなどの編集者を経て、2000年からフリーランスに。スポーツクライミングの取材歴は2013年から。近年はMリーグにハマっている。

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