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【フェンシング】金メダリスト・太田雄貴に残された「最後の務め」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi  photo by AFLO

「今、金メダルを獲り損ねたら、一生獲れない」と気合を入れた太田は、ベスト16でチェン・ロン(香港)に得点で追いつかれながらも第2ピリオドで競り勝つと、「流れのなかで変な失点をする試合をしたことで、(逆に開き直って)心身ともリラックスできた」とエンジンを切り換えた。準々決勝では過去10勝7敗だったロンドン五輪王者の雷声を相手に先手を取り、第1ピリオド中盤では11対3と大量リードを奪って残り36秒で試合を決めた。

 さらに、準決勝の対マインハート戦でも5対1と先行したあと、9対8まで迫られながらもその後は6点を連取し、第1ピリオド残り55秒で勝利をもぎ取った。決勝でもその勢いは衰えず、マシアラスを相手に最初の1分で7対2と先手を奪取。その後の30秒強で同点まで迫られたが、結局、第1ピリオドの残り49秒で15対10にして勝負を決めたのだ。

「アタックでポイントを取るだけではなく、ディフェンスでも取る練習をしてきた。それを試合のなかの随所で変えることができたのが勝因」という太田。「フェンシングがわかるようになってきた。筋力やスピードではなく、『うまくフェンシングをする』ということができた」とも話した。

 北京五輪の銀メダルまでは、「スピードと剣さばきのうまさ」という、持って生まれた資質の高さを武器に勢いに乗って駆け上がった。だが、一時引退状態からの復帰後は、予選から出場してこれまで対戦したことのない若い選手たちとも戦うなかで、フェンシングを改めて考えるようになったのだろう。

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