検索

【ミラノオリンピック】坂本花織、決戦の舞台へ 手足が震えるほどの不安から解き放たれ「行ける気しかしない」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Toshimi Oriyama

【最後の最後まで爆発】

 SP前日まで緊張感に襲われていたことも明かした。

「昨日まではずっと手も震えて足も震えていた。それですごく疲れてしまったから、今日はいい緊張感になったのかなと思います」

 こう言って笑う坂本だが、その時期は部屋や移動のバスなどでひとりになるたびに不安が押し寄せてきて、「どうしよう、どうしよう」と際限なく考え続けてしまう日が続いたという。そんななかでも、ペアの「りくりゅう」こと三浦璃来・木原龍一の演技を見に行っていた。

 三浦は「団体戦でも彼女(坂本)の明るさにすごく救われていたけど、私たちがショートで失敗したあとにとぼとぼ歩いて帰ったら、カオちゃん(坂本)がバスを降りたところで待ってくれていて、『璃来たちなら絶対大丈夫だよ』と声をかけてくれた。(金メダルを決めた)フリーのあとでは私たち以上に大泣きしてくれました」と坂本の心遣いに感謝していた。

 一方の坂本は「りくりゅうに救われた」と言って笑う。

「ペアのショート後には、龍一君が『頑張ってカオちゃんにいいバトンを渡すから』とずっと言ってくれていたんです。だから私は『いいバトンをくれることはもちろんうれしいけど、ふたりが満足できる演技をしてくれたほうがもっとうれしいから、とにかくやりきってください』ということを言いました。

 そうしたら、"黄金のバトン"を届けてきたので『えー!』という感じになって。絶対に落とせないほどのすばらしいバトンを受け取ったので、自分も『行ける気しかしないな』と思うようになって、不安が一気に晴れていい緊張感だけが残りました。本当に嫌だなと思う日が何日か続いていたけど、りくりゅうの大逆転で獲ったあの金メダルを見たら、もうなんかどうでもよくなりました」

 19日のフリーに向けては「守らなければいけないものがないし、最後の最後まで爆発して自分の力が出せたらきっといい演技ができるのではないかと思う。守りに入らずに攻めの姿勢で頑張りたいです」と話した坂本。

 SPはわずかなミスが出て中井亜美に続く2位発進になり、僅差で世界女王のアリサ・リュウ(アメリカ)らが追いかけてくる接戦だ。

「もちろん追いかけるほうがラクなので、最後の最後までこうやって追いかける立場でいさせてくれる亜美ちゃんに感謝です」

 坂本は、心を揺さぶられず楽しく滑っている自分を実感し、そしてこの緊迫した状況を楽しもうとしている。

著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

フォトギャラリーを見る

2 / 2

キーワード

このページのトップに戻る