坂本花織はGPファイナル逆転Vなるか? まさかの5位発進......「嫌な気持ちは置いて自分の演技を」
【何が起こったのかわからない】
「めっちゃ緊張する!」
坂本花織(25歳/シスメックス)は大会に際し、決まったように言う。しかし快活で明るい選手だけに、にわかには信じられない。プログラムは圧倒的な完成度の高さで、経験も含めたスケーティングはいまや別格である。トリプルアクセルや4回転という大技を使わなくても、世界の頂点に君臨してきた。
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しかし、女王の称号がふさわしい坂本であっても、やはりリンクに立つたび、緊張で心が削られるのだろう。
〈今シーズンで引退〉。その題目も、彼女の心に影響を与えないはずはない。周りはことあるごとに、このフレーズをつける。大会のたび、「最後の戦いですね?」と注目を浴びるが、実際のところ、感傷に浸る暇もない。期待は喜びと同義だが、そこには同等の重圧が折り重なるのだ。
「プレッシャーというよりは、自分に負けてしまった感じです。自分でも、ちょっと何が起こったのか、よくわからないというか......映像を見返して振り返られたらと思います」
演技後の取材エリアで坂本は言葉を絞り出すように言った。悔しさが込み上げてくるのか。その声は震えていた。
その日、坂本はどう戦ったのか?
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著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

