新星・上薗恋奈はフリー進めず「悔しい」 三宅咲綺は高橋大輔の「根性」学び躍進...全日本女子の舞台裏ストーリー (4ページ目)
【中井亜美は涙のSPから巻き返し】
SPが終わったあと、溢れ出す涙をティッシュで拭いていたのが、ジュニアの16歳、中井亜美だ。得意のジャンプで得点を伸ばせず、21位スタートだった。
「(フリーまで)1日空いて、気持ちを切り替える時間はあるので。まずはリベンジって自分に言い聞かせて......絶対にトリプルアクセルを2本決めます」
中井は震える声で言った。
「フリーに通れたからには、やるしかないって。最後は気持ちかなって思っているんで。4分間は一瞬だし、後悔したくないから、笑顔で終われるように」
そしてフリーで中井は、トリプルアクセルを2本降りた。宣言どおり、1本目はトーループとのコンビネーションだった。結果、フリーは12位と巻き返し、総合15位にまで順位を上げた。大会後には、世界ジュニア選手権出場も決まった。
夢の舞台である全日本では、SPからフリーの狭間でもいくつものドラマがあった。道を閉ざされた者も、挽回できた者も、そこで生まれる思いが彼女たちを研磨する。氷上で輝く、敗れざる者たちの物語だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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