本田真凜が引退発表 最後の全日本で見せていた決断のサイン 戦い続けたヒロインの誇り (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【全日本9年連続エントリーは誇り】

 しかし、その後は苦難に遭いながらの戦いとなった。

 2019−2020シーズンのGPシリーズ・スケートカナダの際、本田はタクシー乗車中に不慮の事故に遭っている。心身ともに厳しい状況で、出場も危ぶまれたが、渾身で最後まで演じきった。

「練習もそうですが、『ふだんの生活から明るくなったね』って周りの人から言われて。吹っ切れたところはあると思います。怖さがなくなって、自分らしくいられています」

 全日本も、総合8位と挽回した。

 ところが2020−2021シーズンは、またも逆境に見舞われる。前哨戦となるジャパンオープン直前、ジャンプの転倒で右肩を脱臼。一度は自分で肩を入れたが、翌日に滑った時に再び肩が外れ、棄権せざるを得なかった。体調不良のなか、全日本の舞台をつかんだが、直前にめまいで倒れて演技は断念した。

 2021−2022シーズン、本田は若手の台頭で強化選手から外されている。引退もささやかれたが、彼女はブロック大会から勝ち抜き、全日本に出場。総合21位はかつてのヒロインにとって輝かしい成績ではなかったが......。

 2022−2023シーズンも、本田は再びブロックを勝ち進んで全日本に出場している。今度はショートプログラム(SP)26位、フリーに進めなかった。競技の世界は残酷だ。そして2023−2024シーズン、本田は僅差で全日本まで勝ち進む。SP最下位でフリーの舞台には立てなかったが、大会前に右骨盤を痛めた影響もあったはずだ。

「今年は大学生としての全日本は最後で、特別な気持ちがありました」

 本田は最後の大会になった全日本後、そう心情を語っている。

「ブロック大会から勝ちとった全日本で9年目になるんですけど、それは自分のなかで毎年頑張ってきたからこそ、大きな舞台にたどり着けたと誇らしく思うべきことかなって。自分のことを知らない人に、たとえ何を言われようとも。応援してくださる方に勇気をもらったので、その感謝を伝えるという気持ちで頑張れました」

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