本田真凜の無垢なスケート愛 引退を決めていた今シーズンも支え合った「同期との絆」

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

【「偉いことなんだよ」浅田真央からの言葉】

ーー引退に際し、かけられた言葉で印象的なものは?

 会見終盤、記者から出た質問に、本田真凜(22歳/JAL)は迷うことなく答えている。

東京都内で引退会見を行なった本田真凜東京都内で引退会見を行なった本田真凜この記事に関連する写真を見る「たくさんの方にありがたい言葉をいただいたんですが、一番は浅田真央さんで。憧れの女性、憧れのスケーターでもある真央さんとお話しする機会があって、『最後のシーズンになりそうです』とはお伝えしていたのですが。私がつらいな、と思っている時に何か察してくれて、心に響く素敵な言葉をかけてくださいました。

 そして(全日本選手権の)最後の演技が終わった時にもメッセージをくださって、一言一句、間違えずに言えるくらい覚えています。できたら秘密にしたいので一部ですが、『真凜は小さい時から最後まで逃げず、ここまで頑張って来られた。それは偉いことなんだよ! 新しいスタートも、胸を張って進んでいけばいいよ』って」

 少女時代に世間の注目を一身に浴び、それが重荷になっていく。心が締めつけられる辛さや恐怖を、浅田真央は誰よりも知っていたのだろう。重圧をはねのけ、堂々と生きていくことがどれだけ難しいか。高潔なまでの輝きを放ってフィギュアスケート界を切り拓いた浅田は、唯一無二の理解者だったかもしれない。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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