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高橋大輔が新・異色カップルで名プログラム披露「セクシーにエロく」から違った感覚に

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

【名プログラムをもう一度】

 1月12日、横浜。「プリンスアイスワールド」東京公演(1月19〜21日・ダイドードリンコアイスアリーナ)の公開練習が行なわれていた。

 低い重心で、均整のとれたポーズを決める。そこからハムストリングを躍動させ、上体を跳ね上げるように動かす。巧みなエッジワークで音を拾い、指先まで集中して腕を振り、アイスダンスで洗練されたツイズルでアクセントをつけるーー。

 リンクに立つ高橋大輔は、一瞬で別格の空気をつくった。

「プリンスアイスワールド」の公開練習に登場した高橋大輔「プリンスアイスワールド」の公開練習に登場した高橋大輔 シングル時代の2005−2006シーズンにショートプログラムで使用した『ロクサーヌのタンゴ』でのソロパート、人間の情念を滑りにのせていた。「私を置いてきぼりにするなんて、もう生きたくない」という歌詞は、その裏返しの激情か。彼の合図で他のメンバーたちが一斉に解き放たれたように滑り出すシーンは、ショーの見せ場になるはずだ。

「当時(シングル時代)はセクシーにエロくっていう気持ちが強く、それだけ考えていました(笑)。あれはハタチ? 18歳か! それが10年、20年と経って......今はあの時とは違った感覚ですけど」

 高橋はそう言って、過ごしてきた月日を振り返る表情になった。

 ひと言で言えば、高橋は日本フィギュアスケートの"中興の祖"と言える。2002年にシニアデビュー後、シングルで世界選手権優勝、グランプリファイナル優勝、五輪メダルなど次々に日本男子初の快挙をやってのけた。

 2014年に惜しまれつつ引退したが、2018年に現役復帰すると、全日本選手権で銀メダルと度肝を抜く。2020年からはアイスダンス転向。村元哉中とカップルを組んで四大陸選手権準優勝、全日本選手権優勝も成し遂げ、2023年4月の世界国別対抗戦の銅メダルに貢献し、競技生活の幕を閉じた。

 その人気と実力と挑戦が、後進たちの道を切り拓いたのだ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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