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「かなだい」ミスのあとに見えたふたりの歴史 世界フィギュア10位入りへ高橋大輔「自信あります! 言霊です」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

●フリーへ向け「自信はある」

 結成3年は長くないが、"濃密さ"を感じさせた。ミスの修正力もそうだし、勢いに乗っていく勝負強さというのか。ふたりが培ってきた経験の賜物だ。

「練習してきたことを本番で出しきるってことだけを考えて。それで結果はついてくるはず。

 自分たちを信じて滑りきるって。だから会場に入ってからは、お互い何かを合わすってことはしていません。練習でそれをずっとやってきたので」

 高橋は毅然として語ったが、アイスダンサーの矜持だろう。

 10回目の世界選手権というレジェンドは、シングル時代の記録が燦然と輝いている。当時8回出場し、2010年には日本人男子初の世界王者になった。

 2007年の世界選手権には、『オペラ座の怪人』でフリーを滑っている。

 しかし、彼は過去にとらわれていない。失敗への恐怖も克服し、別種目に転向。時代を超えて歴史をつくり続ける伝説だ。

 ひとりのフィギュアスケーターとして、その突き進む姿勢こそ愛される。

ーー明日(3月25日)のフリー、プログラムの完成形を見せる自信は?

 取材エリアで記者に問われた時、高橋は即答している。

「あります! 言霊です!」

 それに引っ張られるように、隣の村元も「あります」と続けた。

 ふたりには、やるべきことをやってきた自負がある。明るい気持ちで挑むことで、開ける運もあるだろう。

 世界の舞台で戦ってきたふたりは、理論以上に覚悟が決め手になることも承知している。フリーも積極的に挑む覚悟だ。

「『ミスしないように』とか『100%で』って自分を追い込むのではなくて。やってきたことに目を向けて、落ち着いて滑れたら、自分たちはできるはずなので。体力よりもメンタルコントロールが重要かなと考えています」

 高橋は楽観的思考で語った。

「一つひとつのエレメンツをこなすことに集中して。最初から最後まで全部って考えると大変なので」

 村元は違う表現で同じ姿勢を示していた。

 ふたりの呼吸は合っている。

 3月25日、フリーは『オペラ座の怪人』で、時空を超えた物語をつむぎ出す。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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