紀平梨花がケガに苦しむもさすがの演技。復帰戦では「ガックシ」も「焦らず、全日本に焦点」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

垣間見えた、さすがの技術

 右足首に負担があまりかからないジャンプのみの構成で、スピンは最初のフライングシットスピンでレベル4だったが、あとの2本はレベル3で、ステップはレベル2という演技。得点は97.80点を獲得し、SPとの合計は154.49点。2016年全日本ジュニア以来の150点台も、6位確定で全日本に駒を進めた。

「5月のアイスショーのあとで氷上練習ができなかった時も、パーソナルトレーナーについてもらってトレーニングをしたり、ピラティスをやったりしたので、思ったより体力があったし、筋肉が落ちていないからこそしんどさも少なかったと思う。今回は急いで仕上げたけど、そのトレーニングの効果はすごくあったと実感しています」

 フリー『タイタニック』は昨季から継続のプログラムだが、この大会が試合では初披露となった。

「昨シーズンは、本当は練習しないほうがいい状態だったけど、五輪シーズンだったので、ジャンプを抜いた練習はしっかりしていて。それで馴染んだプログラムだったので、そんなに焦ることなく練習どおりに滑れたかなと思っています。あとは動画を見返して、意識が抜けているところなどを確認して改善していけたらいいと思います」

 紀平がそう話すように、氷上練習ができていなかった割には、3季連続のSPとともに滑りは安定していて、「さすが」と言える技術の高さも感じさせた。

ケガの完治が今の目標

 3回転ジャンプの練習を始めたことで大会前日には足の痛みも少し出ていたが、強い痛みではなかったので出場を決めたという。それもあって今大会は、悪化しないことを最優先にして2日間を乗りきった。

 そして、試合後には「走ろうと思えば走れるので大丈夫だと思います」と話すが、これからは状態を見ながら練習自体もしっかりスケジューリングしていきたいと考えている。

「やっと戻って来られてよかったという気持ちもありますけど、まだ不安要素があるなかでの試合なので。足のことを何も気にせず滑れるようになる時を楽しみにしているし、そうなれば試合に対してもうれしい気持ちになれる。ケガが完治すればそこからは早いと思うので、まずはそれを目標にします」

 こう話す紀平が今目指すのは、今年12月の全日本でノーミスの演技をして表彰台に上がり、四大陸選手権や世界選手権に駒を進めること。今後は10月末のスケートカナダの出場が予定されている。

「これからまたしばらくはジャンプの練習はしないと思うので、スケートカナダはまだベストの状態には持っていけないと思います。痛みが出なくて完治したことを確認してからでないと練習もしっかりできないと思うので、GPシリーズでは焦らず、全日本に焦点を当てていきたいと思います」

 冷静に完全復帰を目指す紀平。その挑戦が、今やっとスタートした。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る