浅田真央「思いが溢れて、言葉になりません」。覚悟と進化の演技にスタンディングオベーション
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「覚悟と進化」のショーが開幕
「何度だって立ち上がる。これは、私たちの進化の物語」
大型スクリーンに文字が浮かぶ。金色の煌めきが一斉に広がり、さまざまな色の光線が氷上を行き交い、絡み合う。音響も気分を高め、情感をくすぐる。スケーターたちの躍動で氷上に活気がみなぎり、異世界の物語へ人々を引き込む。
「まず光を見つけて、そこから旅に出ていきます。ひとつずつ(困難を)乗り越えて、パワーを集結させて、最後に花開くというか。不死鳥のように強く羽ばたくイメージで」
座長である浅田真央の言葉である。9月10日、浅田真央アイスショー『BEYOND(ビヨンド)』公演は、滋賀県立アイスアリーナで晴れやかに初日を迎えている。
浅田は、唯一無二のフィギュアスケーターと言えるだろう。現役時代、トリプルアクセルは彼女を語る枕詞だったが、それは一端でしかない。天性の「スケート愛」と人生を懸けて磨いたスケーティングが、「真央ちゃん」の本質だった。
周知のとおり、記録も輝かしい。6度の全日本選手権優勝、4度のグランプリファイナル優勝、3度の四大陸選手権優勝、そして3度の世界選手権優勝。五輪も、2006年のトリノは年齢制限で逃すも、2010年のバンクーバー大会で魂を揺さぶる銀メダル。
2014年のソチ大会ではメダルにこそ届かなかったが、むしろ大会ハイライトだった。ショートプログラム(SP)の失敗から渾身の巻き返し、不屈さが胸を熱くさせた。悲劇を歓喜に変えられる生きざまが、彼女を真のヒロインにしたのだ。
アイスショー『BEYOND』は、そんな彼女の人生の投影でもあるか。
2017年4月に現役引退を発表後、浅田は『サンクスツアー』の公演を3年間、202回にわたって重ね、2021年4月にひとつの幕を閉じた。しかし、前に進むのをやめなかった。2ヶ月後にはリンクに立っていた。
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