村元哉中&髙橋大輔が現役続行発表の前に語っていた未来。「何を見せられるのかを知りたい」「いろんな表現ができる」 (3ページ目)
現役継続発表前に語った「展望」
髙橋はいつだって健気に自分自身に答えを見つけ出そうとする。その真摯さが、競技者としての下地なのだろう。フィギュアスケートで世界を切り開いた男の矜持だ。
だからこそ、現役続行を簡単には口にしていない。
しかし世界選手権から現役続行を発表するまで、関係者に会うたび、「これからじゃない!」と励まされた。振付師のブノワ・リショーには演技前に「やめる必要はない」と力説された。2年続け、世界が広がりつつあった。
ふたりは考える日々をつくったあと、ひとつの答えを出した。
ーー現役を続ける場合、何を見せたいですか?
決断を下す前、髙橋にそう訊ねたことがあった。
「うーん......何を見せられるか、わかりきれていません。どこが最終か、ピークがわからないから、何を見せたいかも言えなくて。もし続けるなら、それを知りたいです。何を見せられるのかを知りたい」
それは彼らしい正直な言葉だった。村元も、そこに続けた
「大ちゃんの言葉を聞いて、しっくりときました。自分もアイスダンスから2シーズン離れて、大ちゃんと再スタートし、2年間やったうえでアイスダンサーとして成長したなって感じていて。だからこそ、大ちゃんと次は何ができるんだろうって。大ちゃんとなら、いろんな世界観を出して表現ができるはず。やってみないとわからないからこそ、ワクワク感があります」
ふたりは息が合っていた。アイスダンサーは同じ絵を描きながら、互いが支え合う。その緻密さと完璧さを求められる。
そこで、こんな質問をぶつけた。
ーーアイスダンスは「引き算の競技」の側面があり、失敗が大きく響き、取り返す要素は少なく、どこまで完璧に仕上げられるか。現役続行したら、どう立ち向かいますか?
髙橋はこう答えている。
「大逆転できるスポーツではなくて、それこそ引き算のスポーツじゃないですけど、完璧にできるのは当たり前、GOE(出来ばえ点)で稼ぐか、マイナスをなくしていく勝負ですね。シングルみたいに、ジャンプでこけた明らかな大きなミスではなく、お客さんからするとわからない細かい得点の積み上げになってきます。そこで、(世界選手権FDの演技のように)ローテーショナルリフトのレベルがベーシックになると、追い上げられる点数でなくて。その意味ではアイスダンスは密度の濃さが大事だなって」
3年目、ふたりはアイスダンサーとして密度に迫る。その濃厚さが、ふたりの世界となるはずだ。
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