「自分は本当に幸せ者」。三原舞依、北京五輪落選から四大陸選手権を完全制覇 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

【五輪代表落選の悔しさを晴らす】

 その人生が2017年以来、5年ぶり2度目の四大陸選手権優勝に結実したと言えるかもしれない。

 2022年1月、タリン。エストニアの首都で、三原は自身、4度目の四大陸選手権のリンクに立っている。過去すべての大会でメダルを獲っている"験のいい"大会で、ショートプログラム(SP)からノーミスで72.62点を記録。北京五輪にも出場する韓国勢をも抑えて、堂々の首位に立った。

 三原は冒頭から『レ・ミゼラブル』で悲劇の女性の愛にかけた姿を浮き上がらせ、観客を虜にしている。ダブルアクセル、3回転ルッツ+3回転トーループ、3回転フリップと、自然で完璧なジャンプ。滑り込んできた質と量の証左だろう。スピン、ステップはすべてレベル4。うしろで留めた髪は上品で、指先まで使って表現した演技は命が脈打っていた。

「すごく、すごく落ち込んだけれど、完璧な演技をしようって考えて、1月1日から練習を開始しました」

 そう語る三原は昨年12月の全日本選手権で4位と健闘したが、惜しくも北京五輪代表からは外れていた。病気から1年半ぶりの復帰2年目で、今シーズンの成績は十分に代表に値するものだった。それだけに辛く、葛藤もあったはずだ。

 しかし、出場が決まった四大陸選手権に向け、彼女はリンクで滑ることに打ち込んでいる。たとえば、リカバリーも含めたノーミスを完成させるため、プログラムのなかでコンビネーションジャンプを2本入れ、「たとえどんなことが起きても大丈夫なように」と念には念を入れた。最大限でスケートに向き合い、気づいたら大会の日になっていたという。周囲も瞠目する集中力だ。

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