宮原知子「悪影響になるかもしれない」。それでも大技に挑戦し、自分攻略を目指す (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 ただ、挑戦は始まったばかりだ。

「どうしても、アクセルばかりに気を取られるところもあって」

 宮原は言う。

「他のジャンプを振り回す悪影響になるかもしれない、というのはあります。でも、そこを切り替えられたら、他のジャンプに対する自信にもなるかもしれません。難しいジャンプを入れたことで、他のジャンプに余裕が出てくるというか。一つひとつ試合をして、そこで自信をつけ、"自分をどう攻略できるか"だと思います」

 彼女は新たな形を模索しているが、生き方自体は変わっていない。常に厳しく自分と対峙し、最大限まで技術を高め、殻を破ってきた。己と向き合い、出した答えがトリプルアクセでの"自分攻略"だった。

 2015−2016シーズン、宮原は世界ランキング1位を獲得している。技術を極めて、「ミス・パーフェクト」という称号を与えられた。2017年の全日本選手権まで4連覇。グランプリファイナルでは2度、2位に輝き、世界選手権でも2位、3位の経験がある。その実績を引っ提げ、2018年平昌五輪では4位になった。現役女子フィギュアスケート選手として、もっとも世界で戦ってきた日本人で、その経験は伊達ではない。

 その宮原が、トリプルアクセルに挑むことを自ら決めた。五輪シーズン、女王なりの決意と言えるだろう。

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