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宮原知子「悪影響になるかもしれない」。それでも大技に挑戦し、自分攻略を目指す (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 10月2日、埼玉。ジャパンオープン、女子5人目の滑走者としてリンクに入った宮原は、落ち着いた様子だった。場内アナウンスを受け、ひとつ息を吐いた。ワインレッドのドレスの袖がふわりとし、黒い髪は後ろできつく留められ、艶やかさと律義さが同時に際立った。

 「これまで(最近の)試合では不安や焦りが出ていました。でも、少しずつ自分のなかで消化できている感じで。今日は、落ち着いて入れました」(宮原)

今季、トリプルアクセルの挑戦を決めた今季、トリプルアクセルの挑戦を決めたこの記事に関連する写真を見る フリー曲は、昨シーズンから継続の『トスカ』。不穏な政治情勢のなか、悲恋に身を擲(なげう)つ歌姫トスカの人生を描いたオペラの大作で、芸術的滑りに定評がある彼女が乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負を挑むのにふさわしい。今シーズンの前哨戦、8月の「げんさんサマーカップ」ではフリーで134.74点と2位に入り、回転不足などはあったもののノーミスに近く、完成度は高まっていた。

 ただ、やはりトリプルアクセルの負担があったか(「げんさんサマーカップ」ではダブルアクセルだった)。大技のストレスは、他のジャンプにも影響を及ぼす。そこに怖さはある。

 冒頭の3回転ルッツ+3回転トーループの2つ目が2回転トーループになってしまう。2本目のジャンプ、トリプルアクセルは転倒し、回転が足りず、ダウングレード判定だった。3本目の3回転ループも4分の1回転不足。コレオシークエンスから3回転サルコウの流れは期待を裏切らない技術の高さを見せ、音を拾い集めたようなスピンはレベル4だったが、3回転フリップからの連続ジャンプも減点で、3回転ルッツは1回転になった。ステップシークエンス、レイバックスピンは美しさの極致で、バレエジャンプひとつとっても優雅だったが......。

 スコアは119.69点と低迷した。「げんさんサマーカップ」と比較しても点数は出ていない。同じくトリプルアクセルに挑んだ樋口新葉、松生理乃、河辺愛菜が上位で、宮原は6人中6位だった。

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