羽生結弦は学び続ける。アクシデントを乗り越え完全優勝できた要因 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「ブライアンがしてくれるのはプランの提供だったり、精神面のコントロールですが、それらはあくまで客観的なもので、すべてを充足させられるわけではない。家族との関係でも、自分でなければわからないことがあるように、そういう感覚的な部分は自分で考えて、自分で見つけ出していかなくてはいけないと思うんです。

 今回一番良かったのは、演技前の練習でトリプルアクセルを初めて跳んだことです。今シーズン試合を経験してきた中で、3回転ループの確率が上がって、ミスをしない自信が持てるようになってからはループを試合直前に跳んでいましたが、(練習で)4回転ループも跳んでいる今では3回転ループを問題なく跳べるようになっていますから、それだけでは体が動かないという感覚があったんです」

 それは、大会前にひとりで練習していた時から感じていたことだった。試合をシミュレーションした練習で、フリー冒頭の4回転サルコウが一度も決まらなかった。そこで「ウォーミングアップの方法が悪いのだろうから、何かを変えなければいけない」と考えていたという。

「練習でループがパンクした瞬間にトリプルアクセルをやったほうがいいなと思って跳んでみました。今の身体の状態だったらトリプルアクセルは確実に跳べるという自信があったのでやってみたんです。身体を締める感覚や回転速度が4回転に近いということもありますし。

 それで今回も、リンクに上がる前に『(フリーの)試合前にトリプルアクセルをやってみたい』とブライアンに言って、『いいんじゃないか』という許可をもらっていたんです。フリーの6番滑走という過酷な状況で4回転サルコウがきれいに決まったのは自信になりましたし、演技直前にトリプルアクセルを試すことができた収穫は大きいと思います」

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