2021.06.28

羽生結弦の2013年世界選手権。なぜ満身創痍でも攻めることができたのか

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』
第Ⅵ部 類まれなメンタル(1)

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。

2013年世界選手権、満身創痍ながら渾身のフリーを披露した羽生結弦。演技後には氷に倒れ込んだ2013年世界選手権、満身創痍ながら渾身のフリーを披露した羽生結弦。演技後には氷に倒れ込んだ この記事に関連する写真を見る
 羽生結弦が競技者として見せ続けている精神力の強さ。それがとくに強く印象に残っている試合は、2013年世界選手権だ。

 初出場だった12年世界選手権はフリーで巻き返して3位になり、2012−13シーズンのグランプリ(GP)ファイナルで2位。全日本選手権では初制覇を果たした。そして、全日本王者として挑む13年世界選手権はメダル獲得を期待されていたが、ショートプラグラム(SP)は予想外の出遅れとなった。

 SPは、ジェフリー・バトル氏が羽生に初めて振り付けした『パリの散歩道』の1シーズン目。スケートアメリカとNHK杯では95.07点、95.32点と歴代世界最高得点を連発して自信をつけていた。

 だが、この世界選手権では最初の4回転トーループは回転不足で転倒。後半の3回転ルッツも軸が斜めになり、両手をつく着氷になって連続ジャンプにできず、得点は75.94点。9位発進となった。