本田真凜が苦しんだ大会で気づいたこと。全日本への課題と新しい楽しみ (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 本田の全日本の目標は、今季で引退する兄の太一に得点で勝つことだ。今の自分のモチベーションになっているという。スケートを始めて以来、兄が新しいジャンプを跳べるようになれば、自分もできるようになりたいと思い、ライバル意識をむき出しにしてきた。兄の最後の試合は、採点基準こそ違うが、その目標を達成する気持ちを持って臨みたい、と。

 太一は近畿選手権で180.58点、西日本選手権では177.17点を出した。本田の昨シーズンのベストスコアは、全日本選手権の181.34点。まずは、その得点まで持っていきたいというところだろう。ただ、以前の構成に戻すとなれば、今季はまだ跳んでいない3回転ルッツや、ダブルアクセル+3回転トーループなど難度の高い技が入ってくるだけに、今の構成でほとんどのジャンプが回転不足になっている現状を、どのように修正していくかが大きな課題になる。

 本田コーチは「ひとつひとつのジャンプに関してはすごくいい状態に上がってきているので、プログラムの中でパズルのようにつなぎ合わせていき作品にする作業をしなければいけないと思います。最初のフリップは悪いところが出てしまったのは明らかだったのでどんどん修正していくことと、プログラム全体の流れで滑り込ませて自信をつけることを優先していきたい」と話した。

 新型コロナウイルスの蔓延が収まれば、アメリカのラファエル・アルトゥニアンコーチの下に行って練習する予定もあるという。

 試合で委縮してミスをしているジャンプを一本でも多く成功させて自信を取り戻すことが重要になってくるだろう。本田には全日本に駒を進めた安堵感だけではなく、SP後に感じた悔しさも心の中にしっかりとどめておいてほしい。全日本の先にあるものも意識し、それを目指していく気持ちになることでまた、新たな一歩を踏み出せるはずだ。

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