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羽生結弦はソチで「五輪の怖さを知った」。魔物に立ち向かった底力 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA/Noto Sunao

「プルシェンコ選手は僕の憧れで、彼がいたから五輪を目指すようになりました。一緒にリンクに上がっているだけで、足が震えてくるような大きな存在です。実際、僕にとっての五輪は、彼と(アレクセイ・)ヤグディン選手(ロシア)がすばらしい戦いを繰り広げた舞台という印象があります。団体戦で同じ試合で滑ったことは、夢のような時間で、本当に光栄でした」

 羽生のSPは前年と同じ『パリの散歩道』。手中に収めたという表現がふさわしい、完成された演技でミスをする気配は毛ほども感じさせなかった。結果は97.98点で1位。ほぼノーミスで滑ったプルシェンコを6.59点上回った。さらにジャンプのミスで3位に留まったチャンと比べても、羽生の演技の仕上がり具合は際立っていた。

演技後、ブライアン・オーサーコーチに笑顔を見せた羽生演技後、ブライアン・オーサーコーチに笑顔を見せた羽生「ソチへ入って最初の公式練習は、体が全然動かなくて、『これが五輪なんだろうな』という感覚はありました。それでも滑っているうちに"普通の試合"だと思えてきました。いい感覚で個人戦に入れそうです」

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 また、「五輪の魔物は見えたか」という質問に、「見えたんじゃないでしょうか。ただ、それに捕らわれず、やるべきことを一所懸命にできたと思います」と笑みを見せた。

 2月13日の個人SP。羽生にとって残念だったのは、プルシェンコと個人戦を戦うことができなかったことだろう。プルシェンコは演技直前に、古傷の腰を痛めて棄権。地元の英雄の欠場に会場は、落胆の色が濃かった。

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