2020.08.03

鍵山優真に度肝を抜かれた無良崇人。
独特な4回転トーループに注目

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

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 フィギュアスケートファンなら誰もがあるお気に入りのプログラム。ときにはそれが人生を変えることも――そんな素敵なプログラムを、「この人」が教えてくれた。

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無良崇人
『タッカー』鍵山優真

昨年の全日本選手権で総合3位となった鍵山優真のフリーの演技 去年の全日本選手権男子で3位に入った鍵山優真選手のフリー『タッカー』(振付/佐藤操)には、度肝を抜かれました。

 全日本独特の空気に圧倒されたのか、前日のショートプログラム(SP)ではまさかの7位。トリプルアクセルに苦労していたと思います。でも、ジャンプのすばらしさはもとより、彼の伸び伸びとしたスケーティングは目を見張るものがありました。硬い動きが見られたSPとは別人だったフリーでは、プレッシャーから解放されて観客を味方につけて、すばらしい演技をやってのけました。

 あのレベルの演技をあの中で出せるというのは、リンクサイドで見ていて、ちょっと衝撃でした。ここ最近の中では一番、印象に残っているプログラムです。

 全体を通した堂々とした演技、4回転トーループを含めたジャンプの安定感の高さ、そして表現的な部分などはジュニア離れしていて、シニアにもそのまま通用するレベルになっていたと感じました。先を見据えた時に、ここからどう化けていくのだろうと期待感があります。表現力ではまだ伸びしろがいっぱいあると思いますし、将来性を感じます。

 おそらく、身体能力の高さがもともとあるのだと思いますけど、今後が楽しみだなと思う要因のひとつは、彼の跳ぶ4回転トーループの跳び方です。普通は上半身をあまり左に持っていきすぎないようにするのですが、彼は左側に傾けるように体を持っていけてしまう。あそこまで左側に傾けると、僕だったら体を締められないです。ジャンプの着氷や感覚はお父さん(鍵山正和)譲りなのでは。

 まず、GOE(出来栄え)加点が付きやすいジャンプですし、うまく勢いを生かして跳んでいるので、降りた後も着氷がきれいに流れてくれています。そして、あれが他のジャンプに応用できるようになってきたら、たぶん一気に跳べるジャンプの種類が増えてくるんじゃないかなと思います。