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紀平梨花が敗戦で得たもの。
ロシア3人娘の背中は見えている (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

(4回転サルコウを試合で跳ぶか)迷っていることが今季は多かったけど、ショートのミスがあったので、『絶対にやろう』と気持ちが変わった。時代の流れに沿っていけるようにやるには、挑戦してよかったかなと思えました。最初の挑戦は一番不安になると思うんですけど、今回経験できたので、これからの試合では入れていきたいです」

 内容的には力負けの惨敗だった。だが、紀平にはまだ伸びしろがある。ジャンプ構成はもっと攻めの構成に組み替えることができるし、ジャンプの精度も高めることができる。ジャンプの種類を増やすことができる能力も持っている。

 また今回は、コンディショニングの調整での失敗もあったと本人が明かしている。時差調整が思うようにいかず、いつもより練習と試合の間隔が長かったことで緊張感をコントロールすることができなかった。そのせいで睡眠が足りなくなり、本番で疲労感が出て本来の動きを出せなかったというのだ。この経験を次に生かすことができるかどうかも、トップ争いに踏みとどまれるかどうかの分かれ道になるだろう。

 紀平自身はそのことを十分に理解し、今後の戦いの青写真を描き始めている。

「今回の大会で出たミスの原因を考えたら、いくつもいくつも出てきた。これからは、こういう試合はもっと早く現地入りするように、時差がある試合は1週間前には絶対に着くようにすることを決めました。それから、難易度を下げたくないので、ショートもコンビネーションジャンプを(基礎点が1.1倍になる)最後に跳ぶことも決めました。これからは守りに入らず、もっと攻めた試合を続けていけたらいいなと思います。

 試合慣れしてきて、ただこなすというか、『しないといけない』という感じでやっていたので、楽しむことを忘れていました。とにかく、昼寝は大事だと感じましたし、守りに入ってはダメとか、演技中に何が起こっても焦らないとか、もっと体力強化が必要とか、これからは4回転サルコウから通しの練習をして、どんな着氷の仕方でも最後まで通すことを毎日やって、トリプルアクセルのように安定させるようにして、(12月19 日開幕の)全日本選手権までにしっかりとやっていきたいです」

 ロシアの3人娘は、一気に女子のレベルを上げ、昨季までトップ争いに加わっていたシニア勢に引導を渡すほどの驚異的な強さを見せつけた。それを肌で感じた紀平は、実感を込めてこう振り返った。

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