羽生結弦は「ここからまた強くなる」。ファイナルで手にした成果とは
グランプリファイナルのフリーで4回転5本に成功した羽生結弦 12月7日のグランプリ(GP)ファイナル男子フリー。王座奪還を狙っていた羽生結弦の結果は、ネイサン・チェン(アメリカ)に43.87点差をつけられる2位。だが、その得点差を感じさせない滑りだった。
5日のショートプログラム(SP)の結果は、トップのチェンと12.95点差の2位。羽生はSPが終わってすぐに、フリーをここまで封印していた「4回転5本の構成」にすることを考えていた。そして「それでもたぶん勝てないだろうなと思ったけど、ここで何かを成し遂げたいと思った」とも言う。
また、6日の公式練習の最後に、4回転アクセルに3回挑戦してすべて転倒したことについては、「憧れのあるこの会場でそれに挑戦して、成功させてみたいと考えたから」だと大技の練習をした理由を述べた。
チェンがフリップとルッツ、サルコウ、トーループの4種類5本の構成で臨んでくる気配が濃厚だったからこそ、何の対抗策も講じないで終わりたくない。それをしなければ失礼にあたると考えたのだろう。それは、挑戦する意識を持ち続けることを大切なポリシーとしている羽生にとって、当然の選択だった。
さらにこの会場の氷のコンディションはよく、いい感覚を持ち続けられているという点もあった。エッジ系のジャンプに苦しむ氷ではなく、感覚もよく安心して跳べる氷。ルッツも感覚よく跳べているからこそ、安心感もあり、ケガをする確率も低いと考えたのだろう。
それを証明するように、初日の公式練習から1日1本ずつ跳んでいた4回転ルッツは、2年前のような力を使うジャンプではなく、流れの中できれいに跳ぶジャンプになっていた。6日の公式練習では、4回転を5本にして最後の連続ジャンプをトリプルアクセル+トリプルアクセルのシークエンスにする構成を試し、曲かけで転倒はしたもののその前に跳んでいた4回転ルッツは軽快な跳びで決めていた。
だが若干の不安もあった。それはフリー当日のスケジュールの厳しさだ。男子フリーの開始時刻は現地時間の午後1時。そのため、当日の公式練習は早朝7時になり、朝早くからの公式練習では、その不安を感じさせるような状況になった。最初に跳ぶ予定の4回転ループは2回ともきれいに決めたが、そのあとで入りを5回確認して跳んだ4回転ルッツは軸が斜めになり、着氷はしたが手を付くジャンプになった。その軸の倒れ方は、平昌五輪前のNHK杯の公式練習で右足首を痛めた時に似ていて、見ている側をヒヤリとさせた。
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