負傷の羽生結弦。復帰時は限界マックスでなく「その時できる最高」で (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 平昌五輪代表に関しては、「世界選手権3位以内に入っている選手」という基準が適用されれば、仮に全日本を欠場しても選ばれる可能性はあるが、羽生自身がそれをよしとしないのではないか。

 それでも、現実的には治療を優先させなければいけない状況で、追い込んだ練習ができるのがいつからになるか、まだ不透明だ。それを考慮すると、前戦ロシア大会のロステレコム杯から挑戦し始めた4回転ルッツを入れたフリープログラムを完成させることは、やや難しくなったといえる。

 挑戦することを自らの命題と位置づける羽生が、そんな状況で自分の気持ちとどのように折り合いを付けていくのか──。これが、今後の大きな課題になってくるだろう。

 ただ羽生には、4回転ルッツがなくても、勝つための選択肢を多く持つという大きな強みがあることも確かだ。事実、右膝を痛めて4回転ループを封印したシーズン初戦のオータムクラシックでは、ショートプログラム(SP)の冒頭に4回転サルコウを跳び、後半にトリプルアクセルと4回転トーループ+3回転トーループを入れるジャンプ構成で臨み、112.72点のSP世界歴代最高得点を出している。

 また、その時のフリーは前半を3回転3本に抑えて、後半に3種類の連続ジャンプを含む4回転3本、トリプルアクセル2本を入れた構成。「後半ではマックスの構成」に挑戦していた。

 そこでノーミスの演技こそできなかったが、プログラム自体は2015年のGPファイナルで当時の世界最高得点となる219・48点を出した時より技術基礎点は高くなっている。2年前は前半に入れていた単発の4回転サルコウと4回転トーループを後半に持ってきている分、難しい構成になっていることを考えれば、4回転2種類の構成でもトータル330点超えは可能なのだ。

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