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コーチ歴50年。フィギュアスケート界の名伯楽が語る「私の指導法」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●構成 text by Synn Yinha 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 それでもやはり、教える側にも夢があるということが原動力になるんじゃないかと思います。教えていて喜びを一番感じるのは、教え子が「こんなこと、できるわけがないじゃないか」と思っていたことが、気がついたらふっと簡単にやれるようになっていたときです。

 同じことをいくら繰り返しやっても変化しなかったのに、ある域が過ぎたら、いとも簡単にできていたということがある。年に1回か2回、そういうことを感じる瞬間があります。それは本当に不思議な体験ですし、理屈では解明できない出来事です。若い頃からずっと技術を積み上げてきた人が、その道を究めることができるのと同じことかもしれません。なかなかできなかったことでも、努力を積み重ねれば、ある日突然、スーッとこなせるようになるのです。

 どの選手に対しても、初めは無から接することを心がけています。だんだんやっていくうちに「この人はこういう方向に進むのがいいかな」「どういう方向に進みたいと思っているのかな」「でも、もうちょっとこっちのほうがいいんじゃないのか」と、いろいろな可能性を見出していく。

 フィギュアスケートを教えるにあたり、具体的な最初の一歩は、道具について考えることです。そう、スケート靴です。靴が合っているか、ブレードがゆがんでないか。もしゆがんでいれば素直なスケートを覚えられませんから、きちんとバランスが取れるものをあてがうことが必要です。

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