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羽生結弦、絶対王者チャンから得た「勝利以上の収穫」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 それでも、パトリック・チャンという絶対王者との戦いを経験していくなかで、今回のSPでは彼の存在感や同じ大会で滑るプレッシャーに左右されずに「自分の演技ができたことが大きな収穫」と羽生は言う。

「(今回のチャンのように)SP、フリーともノーミスというのは、スケーターにとって稀(まれ)なこと。その舞台に一緒にいられたというのは光栄なこと。彼は雲の上の存在ですけど、その演技を見たことで、『自分はもっと頑張らなきゃ』と思える部分がありました」

フランス大会の優勝はパトリック・チャン(中央)。2位に羽生。3位はジェイソン・ブラウン(右/アメリカ)フランス大会の優勝はパトリック・チャン(中央)。2位に羽生。3位はジェイソン・ブラウン(右/アメリカ) また羽生は、SPの後の記者会見での「曲や音を表現するために、膝の使い方を意識している」というチャンの言葉が「衝撃的だった」とも言う。

「スケーティングではただ滑っているだけではなく手や上半身を使いますが、彼の場合は下半身でもしっかりと曲やリズムを表現しきれているんです。ものすごく高度な技術ですが、『そういうこともできるんだ』と思いました。そして、それができるからこそ、点数も伸びるんだと」

 さらにカナダ大会では、チャンが19歳で挑んだ2010年バンクーバー五輪の時の話も聞けたという。

「そういうことは演技終了後の記者会見の場でしか聞けないことだと思うし、ものすごく勉強になった。今シーズン、英語が少しずつわかるようになっているので、海外の選手の言葉にも耳を傾けられるようになった。そういう点で、すごく利点になっていると思います」

 今季出場したGPシリーズで、世界王者のパトリック・チャンと同じ時間を過ごした羽生は、この2大会で、勝利すること以上の貴重な収穫を得たといえる。

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