羽生結弦、絶対王者チャンから得た「勝利以上の収穫」
今シーズン、GPシリーズ初戦10月のカナダ大会ではパトリック・チャン(カナダ)に次ぐ2位だった羽生結弦(ゆづる)。表彰台に登る結果を残せたものの、ショートプログラム(SP)、フリーともにミスが出てしまい、本人にとって不本意な内容だった。
だが、2戦目となった11月15日からのフランス大会は納得の滑り出し。当日の公式練習からキレのいい動きで、4回転トーループやトリプルアクセルも余裕を持って決めていた羽生は、夕方からのSPでもその好調を維持した。
フランス大会のSPで自己最高得点を記録した羽生結弦「SP最初の4回転トーループは、自分の中では納得できるジャンプではなかった」と本人が満足していないように、着氷で少し重心の位置がズレたものの、審判のGOE(技の出来ばえ)は2・00点が出る高評価。その後の要素も、すべて加点をもらう出来で自己最高の95・37点を獲得した。
昨シーズン序盤、羽生はSPで歴代最高点を連発しながらも、年が明けた13年からはミスが続いていたが、それを今季、やっと完璧に近い形でできたという満足感はあった。だが「昨年に比べれば体もすごく動いていると思うし、スケーティングも頑張ってやってきた。それなのに去年の最高点を0・03点しか上回っていないのは残念。もう少し頑張らなければいけない」と羽生は悔しがる。
そして、その羽生以上の出来を見せたのが、現在世界選手権を3連覇中のチャンだった。冒頭の4回転トーループ+3回転トーループからすべてのジャンプと演技を完璧に決め、技術点こそ羽生より0・38点下回ったが、芸術要素点で上回って98・52点の世界歴代最高点を記録したのだ。
チャンとの差は3・15点。「SPの3点差というのは大きいですね。エレメンツ(技術点)で少し上回ったけど、5コンポーネンツ(芸術要素点)であれだけ差をつけられると太刀打ちできない部分もあるので......。でもカナダの時はSPが終わった後に2位しか狙えなかったけど、今回は何とか首の皮一枚(優勝に)つながった感じですね」
こう話す羽生は、記者会見場で5コンポーネンツの点数を上げるための方法と、スケーティングについてのチャンの発言を頷(うなず)きながら聞き、「パトリックが会見で言ったことがためになったので、ちょっと実践してみようと思います」と話していた。
しかし、翌日のフリーは、序盤にいきなりつまずいてしまった。最初の4回転サルコウを跳ぼうとした瞬間、踏み切る左足のエッジが傷ついたリンクの溝にはまってしまう不運に見舞われ、ジャンプできなかったのだ。
1 / 3