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【ボクシング】「ベストファイター」井上尚弥に勝つために LAキャンプで、コーチが中谷潤人に授ける"妙技" (4ページ目)

  • 林壮一●取材・文・撮影 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

【チームとして、強く生まれ変わる】

 ロードワークをサボった選手に向けて吐いた口調とはまったく異質の、穏やかなトーンでコーチは続けた。

「今回は、ジュントに対して非常に繊細かつ高度な技術指導を行なっている。"妙技"と呼べるようなものだ。ほんのわずかな動作で相手の攻撃をいなし、そこから即座にカウンターを繰り出せるような、微細な動きさ。といっても、イノウエ陣営は、私たちが用意するあらゆる戦術や技術を、すでに理解しているはずだ。こちらの手札は見抜いているよ。イノウエ自身、過去の試合でそうした状況を何度も経験してきているのだから。

 私たちもまた、彼らの戦略を把捉している。勝敗を分けるのは、どちらがより素早く、正確にそれを実践できるか――。つまり、実行力にかかっている。果たして、我がチームがそれを完璧に遂行できるかどうか。それがテーマだね。

 やるべきことは、5月2日の試合当日、世界最強のファイターを相手に万全の準備を整えること。ただそれだけさ。ジュントは、より強くなるための課題に取り組み、ひたすら成長を目指している。試合までの限られた時間を使いきり、我々はさらなる高みを目指して進化する。我がチームは、より強い自分たちへと生まれ変わろうとしているんだ」

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 3月27日のスパーリング中、中谷は何度かオーソドックスにスイッチした。WBOフライ級タイトルの返上を決めた2022年の夏、ルディの指導の下、中谷はLAキャンプの初日から最終日まで右構えでメニューをこなした。そして、昨年11月、スーパーバンタム級転向第1戦を控えたラモン・カルデナスとのスパーリング中にも、何度かオーソドックスで闘った。カルデナスは、2025年5月に井上に挑戦し、8ラウンドTKOで敗れたものの、モンスターからダウンを奪った世界ランカーだ。

 中谷はカルデナスをオーソドックスで翻弄したが、今回のキャンプでも、ルディの言う高度で繊細な動きのひとつとして、右構えを見せたのだ。

「これまでやってきたことに加え、徹底的に自分の武器を磨き上げて体に染み込ませていきます。今はその作業です」

 挑戦者は、ボクシングが好きで好きでたまらない気持ちを隠さず、虎視眈々と4つのベルトを狙っている。

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著者プロフィール

  • 林壮一

    林壮一 (はやし・そういち)

    1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。

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