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【密着取材】中谷潤人がLAキャンプを終了 井上尚弥が待つスーパーバンタム級での初戦に向け、カルデナスと99ラウンドのスパー (2ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

【中谷にとってカルデナスは「切磋琢磨できる関係」】

 テキサス州サンアントニオ出身のカルデナスは、幼い頃に両親が離婚。メキシコからアメリカに渡ってきた建設労働者の父に育てられた。プロサッカー選手を夢見ていたが、3つ上の兄の影響から12歳でボクシンググローブを握る。だが、アマチュアのリングに上がり始めた頃は負けが先行し、自分がこの競技に向いているのかと疑いを持った。高校時代はストライカーとして鳴らし、サッカーがなかなか諦めきれなかった。

 ボクシングは19歳でプロデビュー。若手時代は8度もファイトマネーゼロを経験している。2カ月のみだが、宅配サービスのドライバーとして糊口(ここう)をしのいだ時期もある。ただ、井上尚弥との試合では、これまでにないファイトマネーが保証された。本人は具体的な数字をはぐらかしたが、アメリカでは「日本円で1億を超えた」と囁かれている。

 スパーリング開始のゴングが鳴る直前、カルデナスは中谷に向かって日本式のお辞儀をした。そんなところに、苦労人ならではのコミュニケーション力を感じる。カルデナスを目にした中谷も微笑み、同じ仕草をした。

 11月10日からの4週間で、中谷とカルデナスは90ラウンドのスパーリングをこなしていた。この日の練習前、中谷は述べた。

「先週あたりから、カルデナスは体もパンチもキレてきて、タイミングを変えて打ってくるようになりました。特に右ストレートに工夫が見られます。反応のいい選手ですね。足を使う日もありますし、常にプレッシャーをかけてくるので、焦らしながらリング中央でポジションを取る作業がなかなか難しいです。

 それと、カルデナスって、僕がやったことをマネするんですよ。例えば、ジャブを顔面に、ストレートをボディにヒットさせると、次の瞬間同じことをトライしてきます。僕がスイッチしたら、彼もやるし、ジャンピングしたら、同じようにというふうに。一瞬一瞬で学ぶ能力が高い選手です。いい練習になっています。ユーモアがあって人間的にも親しみやすく、切磋琢磨できる関係です」

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