検索

【証言・棚橋弘至】鈴木みのるが語る対極のレスラーの功績「あいつはプロレスを男臭いドロドロしたものから、華やかな舞台に変えた」 (3ページ目)

  • 井上崇宏●取材・文
  • 市川光治(光スタジオ)●構成

57歳になった今もリングで存在感を放つ鈴木みのる photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)57歳になった今もリングで存在感を放つ鈴木みのる photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)この記事に関連する写真を見る── その対極にいるのが棚橋選手で、出てきた瞬間に「いい奴だ」っていうのがわかります。

鈴木 あいつはヒーローだよ。やっぱりプロレスってひとりじゃできなくて、ふたり、もしくはふたり以上でやるもので、それを観客に届けるんだ。いつまで経っても「昔はさ」って言うおじさんがいっぱいいるけど、そのおじさんが現役の時、オレは若手だったから近くで見てるんだよ。すごかった試合も確かにあるけど、すごくない試合もクソほどあったことを知ってる。だけど記憶は美化されていく。

 昔のプロレスファンは「昔のレスラーは全員こういうことができて、ああでこうで」と言う。それは今のプロレスが、自分たちの意図している方向ではないからそう思い込んでるだけ。昔のレスラーのほうがひどいし、今のプロレス界に生きていたら前座にすら出られない選手ばっかりだよ。これは本当の話だ。今のプロレスのレベルは相当高い。オレは過去と現在と両方のプロレスを長い時間かけて見てきているし、やってるからそう言い切れる。

── 棚橋選手が体験していない時代のプロレスも鈴木さんは経験しているからこそ、「オレらは負けてねぇんだぞ」というメッセージを送ることができたわけですね。

鈴木 棚橋が最も新日本を象徴する選手であり、日本のトップ中のトップだったんで、あいつが気づかなかったら物事が動かないんだよ。

── 棚橋選手が踏ん張って、力を尽くした結果、新しい新日本プロレス像というものをつくったというのは間違いないですか?

鈴木 オレの印象としては「つくろうとしてた......」かな。あいつは「一気に変えちゃおう」みたいな感じで、それこそ道場から猪木さんのパネルを外したり、「そこまでしなくていいのに」っていうぐらい過剰なまでのファンサービスをしたり、とにかくあらゆる手を尽くしてプロレスの人気を取り戻したがっていた。

 そんな棚橋に反発した中邑真輔がいて、あいつは自分の好きなようにやった。その対比が面白かったわけで......。でもオレは「まだ何かが足りねえんだよな」とずっと思ってて。そして事が起きた瞬間に「あっ、これだった」って気づいたんだよね。

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る