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【女子プロレス】アイドル、大食い、そしてプロレスの世界へ 上原わかなが「負けたくない」執念でつかんだ輝く場所 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

【コロナ禍で芸能界の仕事が激減。『夢プロレス』に望みをかける】

 芸能界への憧れは募るばかりだった。高校2年の時、『CanCam』(小学館)の新世代モデルオーディションに応募し、2万1608人の中からセミファイナリスト100名に選出される。翌年には映画のオーディションで映画関係者に声をかけられ、芸能活動をスタートした。

 理系の大学に進学したものの、芸能への思いは断ち切れなかった。上京したいが、両親に打ち明ければ必ず反対される。そう悟っていた彼女は、水面下で準備を進める。ビールの売り子や撮影会で180万円を貯め、ひとりで物件を決め、あとは親のサインをもらうだけという段階にまでこぎつけたのだ。

 書類を渡された両親は、反対するよりも先に呆れ果てたという。一度決めたらテコでも動かない。そんな娘の性格を、誰よりも理解していたからだ。

 2018年、上原はアイドルユニット「Advance Arc Harmony」でメジャーデビューを果たす。ファン投票でセンターに選ばれるほどの人気を得たが、その裏側で浴びたのは厳しい言葉だった。

「痩せたらソロデビューさせてあげる」

 そのひと言にすがるように、彼女は食事を断ち、毎日10kmを走り込んだ。体重は53kgから38kgまで落ちる。ステージでは笑顔を見せながら、実際にはフラフラな状態の日もあった。努力家で負けず嫌いな性格は、芸能界という環境ではしばしば"自分を削ること"に直結したのだ。

 2019年5月、Advance Arc Harmonyを卒業。同年8月、『有吉ゼミ』(日本テレビ系)の「第2のギャル曽根オーディション」で地上波に初出演を果たした。きっかけは、プロフィールの特技欄に何気なく書いた「大食い」だった。

「人より少し食べられるくらい」という感覚だったが、オーディションではカレー2kgをぺろり。思い返せば、母親と焼肉の食べ放題に行き、ふたりで100人前を平らげたこともある。意外な特技を、ここでようやく自覚した。

「やっとスタート地点に立てた」。そう思った矢先、コロナ禍で仕事は激減。メディア出演の機会は半分以下に落ち込み、長い停滞期が続いた。

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