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【女子プロレス】21歳になった元「中学生レスラー」愛海が語る葛藤と今後「自分も仙女を引っ張っていく力になりたい」 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

【キャリアの差は、リングに立ったら関係ない】

 画面越しの愛海の背景は木目調。「山小屋ですか?」と尋ねると、「道場です」と笑う。その笑顔を見て、過酷なリングに立ち続ける彼女も、まだ21歳のひとりの女の子なのだと、ふと微笑ましくなった。

 その彼女が今年4月29日、里村明衣子の引退試合でタッグパートナーに抜擢された。途轍もない重圧。愛海は、毎晩のようにその緊張を夢にまで見たという。試合前日の夢では、泣き崩れて立ち上がれず、里村に背負われて入場する自分がいた。

 しかし迎えた当日、愛海は夢のなかの少女とは別人だった。入場時にはお決まりの「フォー!」のポーズを掲げ、緊張の影は見えない。リング上では橋本千紘とアジャコングに押しつぶされるように攻め込まれながらも、何度も立ち上がり、最後は里村の勝利をアシストした。持てる力を出し切った試合だったと思う。

 それでも、ほかの3人と比べれば存在感は薄かった。橋本の迫力、アジャの重量感、里村のカリスマ。そのなかで愛海は役割を果たしながらも、やはり埋もれてしまった。

「アジャさんと橋本さんの壁は、まだまだ高かったです。キャリアの差なのかもしれないけど、リングに立ったら関係ないので。そこをどう越えたらいいのか......難しいです」

 愛海はそう言って肩をすくめた。キャリアの差を認めながらも、「リングに立ったら関係ない」と口にする。その矛盾は、まだ自分の言葉を探している証にも思えた。その揺らぎこそが、今の等身大の愛海なのだと思った。

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