中谷潤人とNBAスーパースターのリラード、世界のトップ同士の共鳴 中谷は「ステップを取り入れた」 (2ページ目)
【中谷と井上の試合は「すばらしいファイトになる」】
リラードはかなりのボクシング好きであり、2021年3月8日には、50年前に行なわれたモハメド・アリvsジョー・フレージャーの映像を目にして気持ちを昂らせ、Tip Offに備えた。同3月13日に元統一ミドル級チャンピオンの"マーベラス"マービン・ハグラーが永眠した直後は、追悼の意を示すべく、ハグラーの顔写真が入ったトレーナーを着て試合会場入りしている。
ZOOM会見中、リラードに何度か著名ファイターに関する質問を浴びせたこともある。稀有なポイントガードは「ブルーカラーの黒人たちが、自分の可能性をスポーツに懸け、人生を拓いた姿に感銘を受けた」と語った。コロナが鎮静化し、NBAが以前と同じように記者を積極的にロッカールームに入れるようになった今シーズン、筆者は久しぶりにリラードを直接インタビューする機会を得た。
彼はオフシーズンの自主トレにボクシングを取り入れている。
「肉体はもちろん、メンタルトレーニングにも最高だ。サンドバックを叩く時は、自分との闘いじゃないか。どこまで自分を追い込むか。バスケと通じるものが多々あるよ」
リラードは、カリフォルニア州イースト・オークランドのブルックフィールドで育っている。ギャング、ドラッグ、暴力、そして犯罪がはびこる荒れた地だ。アメリカ合衆国内で、拳ひとつで這い上がる男たちと、非常に似たバックグラウンドを持っている。
「だからボクシングに惹かれるんだ」
シーズン中は不可能だが、リラードはオフにビッグマッチを生観戦する。2023年7月29日に催されたWBA/WBC/IBF/WBO統一ウエルター級タイトルマッチ、テレンス・クロフォードvsエロール・スペンス・ジュニア戦もネバダ州ラスベガスに足を運んでいる。
「あれはいい試合だったなぁ。ジャブでリングを支配したクロフォードは見事だった。俺が思う今日のパウンド・フォー・パウンドはクロフォードだね」
2023年7月、スペンス(左)を9ラウンドTKOで下したクロフォード photo by Esther Linこの記事に関連する写真を見る
NBAのスーパースターは背番号0の掛かった自身のロッカーの前で、笑みを絶やさずに話した。パウンド・フォー・パウンドに触れた折、日本人ファイターの名も彼の口から出た。
「ナオヤ・イノウエとジュント・ナカタニがやる予定なんだよね。トーキョー・ドーム開催か。俺も観に行きたいよ。すばらしいファイトになるだろう。共にパンチがあって、テクニックも申し分なく、ハートも強い。どちらが自分の闘いをするかで明暗が分かれそうだな」
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