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井上尚弥の防衛戦を観戦したメイウェザーの叔父は「これまでにない姿」 超大物プロモーターには中谷潤人戦について直撃

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

【フロイド・メイウェザー・ジュニアの叔父も観戦】

 現地時間2023年7月29日、ラスベガスのT-モバイル・アリーナで催された4冠統一ウェルター級タイトルマッチ、テレンス・クロフォードvs.エロール・スペンス・ジュニア戦には、1万9900人のファンが詰めかけた。今回、日本の誇る"モンスター"、井上尚弥のWBA/WBC/IBF/WBOスーパーバンタム級タイトル防衛戦、ラモン・カルデナス戦にも同じ会場が用いられたが、収容者数は8474。最上階にはカーテンが敷かれ、座席にはしなかった。

MGMには「怪物」と書かれた巨大広告も photo by Soichi Hayashi Sr.MGMには「怪物」と書かれた巨大広告も photo by Soichi Hayashi Sr.この記事に関連する写真を見る

 前日計量も、本来ビッグマッチの際にプレスルームとなるMGMグランド内の一室でファン200名のみに公開される形で行なわれた。井上にとっては、2021年6月以来のラスベガスでのファイトであり、是が非でも本場で己の価値を高めたかった筈だ。

 このところ、井上の世界タイトルマッチはスポーツ総合チャンネルであるESPNが全米中に放送している。が、開始時刻がウィークデイ東部時間の午前8時、西部時間なら午前5時といった調子で、TV画面の前に座るのが難しい状況にある。そんななかでモンスターが、いかなるパフォーマンスを披露してアメリカ人ファンを増やすかが見どころのひとつであった。

 ラスベガスを代表するホテル&カジノであるMGMグランドの正面玄関を入って左手にある土産物屋には、「怪物」と漢字で書かれた無数の黒いTシャツが陳列されており、女性店員は「飛ぶように売れています!」と満面の笑顔で話した。今回の井上vs.カルデナス戦はTop Rank社が手掛けており、同社が催した1985年4月15日の統一ミドル級タイトルマッチ、マービン・ハグラーvs.トーマス・ハーンズ戦の復刻版Tシャツも並んでいたが、彼女は「売れ行きがまったく違う」と肩をすぼめた。

 モンスターより3歳下であるカルデナスの戦績は、26勝(14KO)1敗。2017年4月にキャリア唯一の黒星を喫してから、14連勝を重ねてWBAの指名挑戦者となり、井上戦に辿り着いた。ボクシングだけではとても食えず、Uber、Lyft、DoorDashなど、シェアドライバーや配送業で日銭を稼ぎながらリングに上がってきた男だ。

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著者プロフィール

  • 林壮一

    林壮一 (はやし・そういち)

    1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。

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