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中谷潤人とNBAスーパースターのリラード、世界のトップ同士の共鳴 中谷は「ステップを取り入れた」 (3ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

【リラードからのエールに、中谷は「光栄です」】

 中谷潤人が15歳からサウスセントラルで腕を磨いたことを告げると、リラードは興味津々といった調子で言葉を続けた。

「英語も話せない15歳の日本人少年が、そんな危険地帯で研鑽を積んだのか......。大したメンタルだなぁ。そりゃあ応援したくなるよ。『頑張れ』って伝えてくれ。彼は実に動きがシャープだ。パンチが伸びるよね。あのリーチを生かしたボクシングがいい」

 リラードがこの発言をしたのは、今年1月25日のことだ。中谷は毎試合、LAでキャンプを張って本番を迎えるが、週に1度の休日となる日曜日を利用してNBAを観戦したことがある。そこで"超人"たちの妙技に心を奪われた。

「ものすごく刺激をもらいました。ステップなんか、翌日からボクシングに取り入れたほどですよ」

6月8日の西田凌佑戦に向けて調整を行なう中谷 photo by Soichi Hayashi Sr.6月8日の西田凌佑戦に向けて調整を行なう中谷 photo by Soichi Hayashi Sr.この記事に関連する写真を見る

 リラードの激励を受けた中谷は、YouTubeで超一流ポイントガードの動きを目にする。

「真っ直ぐにドリブルしていたかと思ったら、次の瞬間に90度左に体を向けて相手をかわすプレーなんて、芸術ですよね。学ぶことがとてもあります。僕を知っていてくれたということが、まずもって光栄です。いつか、試合を観に来ていただきたいです。こちらも観戦しに行きたいですしね」

 WBCバンタム級のチャンピオンが、リラードのケガとバックスの敗退を耳にしたのは、IBF同級王者である西田凌佑との統一戦に向けてキャンプ中だった4月末日のことだ。

 中谷は一瞬、残念そうな表情をした後、言った。

「プロのアスリートにとって、ケガはつき物だと思います。これから手術、リハビリをするなかで、自分と対話する時間が増えるんじゃないでしょうか。そこを経て、また彼らしい芸術的なプレーを見せてほしいですね。僕自身、とてもワクワクさせてもらえる選手ですから。

 リラードからいただいた言葉を周囲に伝えたら、エイドリアン・アルバラード(中谷と同じチームで練習するプロボクサー。5月20日に日本のリングに上がる)が、アディダスと彼がコラボしたシューズをプレゼントしてくれたんですよ。僕はスニーカーが好きなんですが、白に緑の3本線というデザインでした。緑はWBCのカラーですし、うれしかったですね」

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