井上尚弥も中谷潤人も「知らない」 かつてデラホーヤと戦い敗れ去った元世界王者の今 (2ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

【デラホーヤらとの対戦が実現】

 この年の9月、「1000年に一度の戦い」という派手なキャッチコピーで、トリニダードとデラホーヤによるIBF/WBC統一ウエルター級タイトルマッチが催される。全勝中のウエルター級王者同士の潰し合いは、僅差でプエルトリカンが勝者となったものの、謳い文句ほどに白熱した試合とはならなかった。

 バルガスは、「失望した。俺ならもっと熱いファイトがやれる!」と発言。そして、階級をアップして自身と同じスーパーウエルター級チャンプとなったトリニダードに統一戦を呼びかける。さらに3つの白星を加え、20戦全勝18KOとなった2000年12月2日、WBA王者だったトリニダードと対戦する。だが、38戦全勝31KOのトリニダードの牙城を崩すにはキャリアが足らなかった。

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 第4ラウンドにWBAチャンプを倒したが、ファーストラウンドに2回、最終12ラウンドに3度のダウンを喫し、TKOで敗れる。この試合を境に、バルガスは頻繁にキャンバスに沈むようになった。ボクシング界の隠語を用いるなら、「壊れた」のだ。

 それでも持ち前の闘志で、デラホーヤ、モズリーとの対戦を実現させる。結果はすべて黒星だったが、敗れながらも"男"を見せた。反射神経に衰えが見られ、打たれもろさが露わになってからも、激しいトレーニングを続け、リングに上がれば全力でKOを狙いにいった。それこそが、バルガスの魅力だった。

 1996年11月生まれの長男、2000年7月生まれの次男、2004年4月生まれの三男と、バルガスの3人の息子は全員が父と同じ職業を選んだ。

「子供たちにやれ、って言ったことは一度もない。長男が『ボクシングをやりたい』って伝えてきたのは、彼が17歳の時。正直、ちょっと遅い気がした。でも、『チャンピオンになる』と真面目に練習する姿を見て、いいなと思ったよ。我が子が選んだ道で成功したいと願うなら、支えてやるのが父親の務めだろう。息子たちにとって文句のない親父になることが、俺の人生のゴールだから」

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