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山中慎介が語る井上尚弥vsネリ「敵討ちではなく『ひとつの試合』と思ってほしい」 フェザー級転向も「問題ない」 (4ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【フェザー級でも活躍できる】

――ネリ戦の結果が出る前ですが、井上選手の無双状態で、ライバルに当たる選手が見当たらない状況についてはどう思いますか?

「スーパーバンタム級で対戦相手を探すとなれば、ネリ戦の後はムラドジャン・アフマダリエフ、サム・グッドマンかと言われていますね。個人的には、アフマダリエフのほうが興味深いです」

――アフマダリエフは、アマチュアでの試合経験が豊富なリオ五輪の銅メダリストで、タパレスに敗れるまでは2団体統一王者で無敗。王座陥落前は、スーパーバンタム級の"ラスボス"との見方もありました(戦績は12戦11勝8KO1敗)。

「アフマダリエフは、バランスがよくて技術が高く、タフな印象もあります。それでも、井上の勝利は揺るがないでしょうけどね。グッドマンにも、脅威は感じません」

――グッドマンは16戦全勝(7KO)という戦績です。

「KO率が低くて、倒せるイメージが湧かない。パンチがない選手が井上を相手にするのは相当厳しいです。あとはジョンリル・カシメロ(元世界3階級王者)ですが、昨年10月の小國以載戦(4ラウンドで負傷引き分け)を見た感じではちょっと厳しいですね。井上は年内に3試合を目標にしているそうですが、その後はフェザー級に上げるんじゃないでしょうか」

――気が早いですが今のフェザー級戦線を見ると、昨年12月、五輪2連覇の王者ロベイシ・ラミレスが、ラファエル・エスピノサ選手に敗れてWBO王座から陥落しました。

「ラミレスの敗北は本当に驚きました。エスピノサはかなり大きい選手ですし、WBC正規王者のレイ・バルガスも身長がある(エスピノサは185cm、バルガスは178cm)。この階級になると、骨格やフレームがかなり変わりますね。井上の身長は165 cmですが、ナチュラルウェイトからの減量幅は大きいので、階級を上げても問題はないと思います」

――井上選手の普段の体重は62、3kgのようですから、スーパーライト級くらいですね。

「そうですね。以前から大橋会長は、『井上はスーパーバンタム級やフェザー級で最も強さを発揮できる』とコメントしていました。現在のスーパーバンタム級での活躍を見れば、その言葉も納得できますし、ひとつ上のフェザー級でも期待できます。

 僕はスーパーバンタム級の初戦(スティーブン・フルトン戦)を見て、フェザー級もいけることを確信しました。スーパーバンタム級のトップにいたフルトンを8ラウンドであっさりKOし、タパレス戦はガードの上からでも効果的な打撃ができたわけですから。

 フェザー級に上げるタイミングや対戦相手も気になりますが、まずは何より、ネリ戦に注目しましょう」

【プロフィール】
■山中慎介(やまなか・しんすけ)

1982年滋賀県生まれ。元WBC世界バンタム級チャンピオンの辰吉丈一郎氏が巻いていたベルトに憧れ、南京都高校(現・京都廣学館高校)でボクシングを始める。専修大学卒業後、2006年プロデビュー。2010年第65代日本バンタム級、2011年第29代WBC世界バンタム級の王座を獲得。「神の左」と称されるフィニッシュブローの左ストレートを武器に、日本歴代2位の12度の防衛を果たし、2018年に引退。現在、ボクシング解説者、アスリートタレントとして各種メディアで活躍。
プロ戦績:31戦27勝(19KO)2敗2分。

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